芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

春の芝生の殺菌 殺菌剤散布の目的

芝刈りを始める頃、殺菌剤で病原体の数を減らす

春、そろそろ第1回目の芝刈りが必要となる頃、家庭の庭環境によっては、雑菌剤によって、そのお庭で問題となる病原体の数を減らしておくことが効果的です。

地温が上がってくると、その土地に潜む病原体たちの活動も活発になります

芝にとって葉を刈り取られる「芝刈り」は生命の存続にとって有害。芝刈りを始めると、かなり高負荷でその危機を乗り越えようとします。

芝全体の光合成量が十分ではないこの季節、芝刈りを引き金に、病原体のほうが有利になって急に症状としてあらわれる・・・なんてこともあります。

転ばぬ先の杖として、芝に高負荷をかける(芝刈りや根切りなど)その前に、芝を襲う病原体の数を減らしておくことには、一定の効果が期待できます。(※病原体の種類による)

 

病害発生のメカニズムについては、アルム農材 農業マガジンへの寄稿で詳しく解説しています

病原となる菌がいるだけで病害になるわけではない。芝の体力と、環境の影響を受けながら、病原が強いか?芝が強いか?で、発症するか否かは決まるのです。

www.almnet.co.jp

芝は本来強い!弱くするのは「人間の芝生管理」

この記事に書いているとおり、完全体の芝は、猛烈に強いです。長い葉で大容量の光合成生産をし、有り余るエネルギーを使って力強く代謝します。

一方、人間が管理する「芝生」は、常に人間が「芝に危機(芝刈り等)を与える」ことで、芝の生存本能を発揮させ、一生懸命、新しい芽を作らせる。

これにより、芝は生き残るために生理代謝を「新しい茎・葉をつくる」ことに仕向けます。葉の数が充分に増えるまでの間は、いっぱいいっぱいで頑張っているのです。

美しい芝生を目指して頻繁に刈込みをするのであれば、そのダメージ分を補うために、本来自然界では必要ない殺菌剤を上手に(多すぎず、少なすぎず、適切な時期に)使いこなして、芝の生命力を支援してあげることも必要になる場合があります。

その必要性は日照が充分で水はけコントロールが良いところほど少なく、悪条件の庭ほど多くなる傾向があります。

無農薬至上主義も良いのですが、誰もが恵まれた環境とは限らない。日照条件等が悪いお庭の場合は、葉の長さを長くして、より自然体に近い芝の姿にしてあげないと辻褄が合いません。

だからこそ、薬剤を正しく理解して適切に使うことも、ご家庭の芝生育条件によっては必要になるのです。

病原体にもさまざまな種類がある

さび病のように、いつでも空気中を飛んでいて、胞子たった一つでも芝に感染することができるタイプもいます。逆に、一つ一つの個体はたいした侵略力がナイけど、数を増やしてから芝に襲い掛かり、一気に深刻なダメージを与えるラージパッチのような種類もあります。

さび病は、感染予防が効果的 芝に鎧を着せる

さび病には、オーソサイドなど一般的な予防殺菌剤を、感染しやすい季節だけ定期散布することで、芝に鎧を着せて簡単に防御することができます。さび病は、生きた芝にしか感染できないので、芝を殺すことはありません。

このタイプの薬剤は、薬剤耐性リスクも低いので、鎧が剥がれ落ちないように病害発生が予想される季節に複数回(ある程度集中的に)使用するのが効果的。

ラージパッチは、病原体が芝を襲う直前を狙う

一方、ラージパッチに代表されるリゾクトニアの系統は、土や残渣などに潜んでいて、環境が整うと急激に数を増やし、ある程度の菌密度になると芝を攻撃することができるようになります。この菌は、腐った芝でも、生きている芝でも、どちらでも生きていけるので、芝の命に対して容赦ありません。

一度でも持ち込んで発症させてしまうと、以後、繰り返し同じ季節・同じ条件が整うと発症する可能性が高まります。我が家の芝生には、春先、ラージパッチの傾向があります。

そこで、頼りにしているのが、トップグラス。

幅広い病原に効果がある薬ですが、特に、発生直前の頃のラージパッチ抑制に効果があることを、我が家の芝生管理では実感しています。

トップグラスの使い方

まずは、じょうろに必要な水を満水まで入れます。

この薬は芝生の地ギワや土に撒いて効果が出る薬ですので、散布道具は噴霧器よりじょうろが適しています。

殺菌剤の多くは、界面活性剤の成分が入っていて泡立ちやすいので、薬剤を入れるのは最後です。水が先、薬が後。これは覚えておいてください。

次に展着剤を入れます

土壌散布の場合は、展着剤が要らないケースもありますが、芝の根本にしっかり浸透させるために、僕は使う派です。

展着剤を水によくなじませる

かきまぜます

トップグラス薬剤を規定量入れる

今回は希釈倍率1000倍。1平米あたり0.5リットル散布します。

このじょうろの水量は8Lですので、8グラム薬剤を入れます。

薬剤は、化学品ですので、人間の薬と同じように扱います。だから袋を詰め替えたりしないほうが良いです。袋から出すときは、常に使い切るとき。

そのために、計量スプーンを持っていると便利。

よくかき混ぜてから使用

散布量のコントロール

今回は、1000倍希釈液を、1平方メートルあたり500ml散布します。

じょうろに入れた水の量が8リッターですので、我が家の芝生面積(35㎡)の半分の面積でちょうど使い終わるように散布します。

端から順に散布したくなりますが、そうすると残量のコントロールが難しくなるので、ターゲット面積全体に同じモーションでさーっと1回なぞり、余ったら、2回目、3回目と撒いていく方法が、均等に散布できてオススメです。

いろいろ工夫しながら、良いやり方を見つけていってください。

トップグラス使用上の注意点

この薬剤は、薬剤耐性リスクが高いです。必ず、ローテーション散布しましょう。

我が家では、年に1回、春にしか使いません。

殺菌剤ローテーションについては、過去にまとめていますので、こちらをご覧ください。

tokyo40mile.hatenablog.com

春はげ症には、春に散布してもダメ!対策は秋です

春暖かくなっても、芝生があちこち斑に剥げてなかなか一面緑にならない。そんな症状は春はげ症の可能性があります。この病害、感染は芝が休眠に向かう秋です。

冬の休眠の間、芝の体内でじーっくり時を待って発症するので、春になってから殺菌剤を撒いても、症状が改善しません。

感染タイプは、ラージパッチと似ているものの、感染時期が異なるのです。

春や秋になって菌数を増やしてその時襲って症状が出るラージパッチに対して、春はげ症は、感染から発症までの潜伏期間が長い(冬の間待ってる)のです。

この対策についてもまとめてありますので、こちらの記事をご覧ください。

tokyo40mile.hatenablog.com

病害は目に見えないから不安だけど、仕組みを知れば、こわくない

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2級芝草管理技術者 ゴールドグリーンアドバイザー東京40まいる

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次の動画か、ブログでお会いしましょう。

では、また!