芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

芝生の肥料の選び方〜知っているべき肥効の違いとは

芝生の土をコントロールする肥料の選び方

我が家で使っている4つの肥料について、その選定理由をご説明します。

ベース肥料 イデコンポガーデンEV

スポット調整肥料 バロネス芝生の肥料

元肥 マグァンプK中粒

液肥 メネデール芝生肥料

家庭園芸での芝生の肥料の在り方についての一つの考え方

多くのご家庭の芝生では、一度張ったら何年もの間、毎年、季節に応じて同じサイクルを繰り返します。我が家の芝生は前のオーナーが芝を張ってから32年目を迎えています。

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芝生の土の管理方法は、目的によって様々です。出荷を目的とした芝生生産圃場の土の管理と家庭は違います。瞬発回復力がとても重要なサッカースタジアムのピッチ管理とも違う。

本業ではない「趣味でやっている」家庭園芸芝生では、できることなら土の中の肥効管理も、毎年、同じルーティンで対応できると管理が楽になります。

これがながーく芝生と向き合うコツであったりします。つまり「肥料に神経を尖らせない」管理です。

土の性質は庭によって違うから、肥料管理も厳密には、それぞれ違う

土には、緩衝能というものがあって、外部からのさまざまな入力に対し、物理性・生物性・化学性について、いずれも「鈍感」に受け容れてくれるキャパがあります。

地上は雪が積もっていても土の中はナカナカ氷点下までは温度が下がらないですし、地上を焼き払っても地下の根は生き続けることができる。

そして「ある菌」がいるからと云って、その菌だけが土を支配して占領することは容易にはおこらない。これは物理性・生物性の緩衝能の観点です。

肥料管理は化学

「肥料を土に入れる」というのは、土が本来保有しているさまざまな物質に対して、一義的には「化学的にバイアス」をかけるということ。そして長い時間軸では土壌微生物にバイアスをかけ、最終的には土壌の物理性にも影響を与えます。

さて、肥料。この扱いで陥りやすい「勘違い」について、過去にこの動画で解説しました。


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つまり、土の化学性は、緩衝能を持っているのでその土が持っているキャパシティーの範囲内だったら何をやっても(一見)うまくいく!

しかし、キャパシティーを超えてバランスを崩したら、容易には元には戻らない。(これも緩衝能)

必要なだけ肥効が効いて、1シーズン終わるときには使い切って元に戻るのが理想

1シーズン使い切りで、もとの状態に戻ることさえできれば、毎年、毎年、同じ時期・同じ状態のときに、概ね同じ量の肥料を撒けば、同じようにうまくいくルーティンができあがります。

これを掴んだら肥料コントロールは格段に「簡単」になります。

芝を商材として扱う人でない限り、肥料にあまり神経を尖がらせず、簡単なレシピで成果を毎年持続的に得られたらイイですね。芝生の雑学 東京40まいるの芝生肥料管理はそーいうポリシーで実践しています。

肥料は「撒いた量」よりも「肥効」がいつ?どのくらい?出現するのかこそ重要
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肥効とは撒いた肥料を植物が吸収して利用できる状態のこと。芝生専用に開発された肥料は、芝が効果的なに吸収して、かつ、翌年まで肥効を持ち越さないようにコントロールされたオートマチック肥効を備えたものが多いです。買う時は、その肥料がどんな肥効特性なのかを確認するようにしましょう。(実は「芝生用」でも肥効特性は様々です)

我が家で使っている肥料も、それぞれに、肥効は異なります。

イデコンポガーデンEV

撒いてもすぐには効かない遅効性の肥料です。土になじんだ後、微生物分解によって徐々に肥効が現れ、散布2か月後くらいに穏やかに効きます。肥料は有機ベース(けい糞)なので、土を傷めにくく自然体を重視して芝の土管理をしたい人にオススメ。

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この肥料に含まれるバチルス菌は、サッチの分解能力が高いのが特徴です。ただし、バチルス菌はとても強い菌なので、撒きすぎると土壌微生物バランスを崩すことがあります。用法・用量の範囲で使っている限り、とても安全で管理しやすい肥料です。

本来あるべき土のチカラをつかって、時間をかけて芝にごちそうしてあげる・・・そういう肥料です。ただし、目に見えた瞬発力はありません。ある意味、肥料を撒いた感じがしない。気づいたら「そーいえば、今年の芝は健やかだなぁ」と感じる。

目安は2ヶ月後の肥効。

雨続きで肥効コントロールが難しい6月に向けて4月に散布。真夏の肥効のために梅雨入り初期に散布。秋の休眠入りに向けた備蓄のために9月ごろ・・・といった具合の使い方です。

常に意識するのが、微生物の働きにかかる時間。

バロネス芝生の肥料

こちらは、THE化学肥料!です。芝の状態を見てて「ここで効かせたい」というときにスポットで使うのに便利です。イデコンポガーデンEVの補助肥料として便利です。

この肥料の優れている点は、肥効を自動でコントロールして、撒いた直後から概ね2~3週間先まで、安定して効いてくれる点。人間側がコントロールする必要がありません。

肥効の出方が異なる様々な粒が混在しているので、早く肥効が出て安定して一定期間働いてくれる、代表的な芝生専用の緩効性肥料です。撒きすぎにさえ注意すれば、知識を必要とせず、誰が撒いても概ねうまくいく。そういうオートマチック肥料。

僕のオススメは、一度に多く撒かず、2週間間隔くらいで2回以上に分けて必要量を撒くと、トラブルになりにくいです。(※ 窒素を好むサビ病の激発などのトラブル回避、濃度障害など)

マグァンプK 中粒

主にリン酸コントロールに使っています。リン酸は地表に撒いても水平方向に流れてしまうし、地中に埋めても鉄やアルミニウムと結合して芝が吸収できなくなってしまうばかりか、土から取り出すことは不可能になってしまいます。必要なとき、必要な量が土にある状態をつくるために、コアリングの際、ごく微量を目砂に混ぜて使っています。

微量の中粒を使う限り、翌年への持ち越しはナイようです。過去3年間、テストしていますが、いずれも土壌診断の結果は良好。使用する量はほんの僅かです。1穴に1粒入るか入らないか?くらいの量しか使いません。芝生に使う場合は、けっしてたくさん入れないように注意してくださいね。ほんの微量です。

メネデール 芝肥料

液肥は、人間にたとえると点滴みたいなものです。微生物分解をややショートカットして芝に直接注入するようなもの。肥効は瞬発で立ち上がり持続性はありません。

芝生管理のカンフル剤として、1本持っておくと、何かの時に役立ちます。我が家では、記念撮影の直前や、真夏に肥料不足の症状が現れた時など一時的に芝を回復させたいとき使うことがあります。

肥料は撒きすぎに注意

いずれにしても、肥料は撒きすぎると修復は至難の業です。常に腹八分目以下を心掛けて、余裕を残して「やや足りないくらい」を狙うと、オーナーのコントロール下に置きやすいです。毎年、必要な量を必要なだけ供給する。これもひとつの簡易管理法。家庭芝生の省力化です。

たくさん撒いた方が見た目がぐんぐん良くなるように感じる場面もあるから、誤解に陥りやすい。

肥料は芝生のごはんではない

芝生のごはんは、太陽の光と水と空気(二酸化炭素)でつくる炭水化物(糖)です。

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ご飯(エネルギー源)をたくさん食べる元気があるからこそ、おかずの肉や魚(身体をつくるもと)が必要になって、それを食べると成長する。

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芝が食べたくなるとき(充分な葉と太陽の光・水・空気がある時)に合わせて、美味しいおかず(主に窒素)を多過ぎず少なすぎず用意してあげるんです。そのとき、芝が残さず美味しく食べてくれるように。

多すぎると何がいけないか?

芝や植物のたちが利用するのは窒素だけじゃありません。それぞれの要素によって植物の体内での移行時間と量が違います。人間が偏った食事をしていると身体を壊すように、植物も窒素ばかりを多く与えると、他の要素をうまく配置することができずに弱体化します。たとえば、細胞壁を強くするカルシウムが窒素による組織生成スピードについていけず、ひとつひとつの細胞が軟弱なまま、姿を形成してしまう・・・などです。

丈夫に育てるためには、植物の健全な成長にあった適切なペースでの肥効が大切なのです。

イデコンポガーデンEVはシェフ(微生物)が時間をかけてつくるご馳走

バロネス芝生の肥料はお腹が空いた時、すぐに食べられるファーストフード

マグァンプKは、年に一度のサプリメント

メネデール芝肥料は点滴もしくは即効性栄養ドリンク(ユンケルなど)

こんな風に考えれば、それぞれの肥料の特性、使い方がわかりますね😊荒削りな表現ですけど、概ね当たっています。

芝生生育時期に合わせた適切な肥料コントロール

我が家での芝生の手入れとタイミングについては、ショート動画で頻繁に公開しています。過去動画には、概ね、芝生の管理に必要な基礎知識動画が完備されています。

興味がある方は、2級芝草管理技術者ゴールドグリーンアドバイザーが運営するYouTube「芝生の雑学 東京40まいる」のチャンネル登録をお願いします。

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次の動画か、ブログでお会いしましょう。

では、また!