芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

芝を強くするケイ酸資材イデターフは梅雨の病害対策

殺菌剤は病害の根本解決ではない

病害対策というと「殺菌剤」を思い浮かべる人は多いと思います。しかし、芝草管理技術者研修でも、薬剤メーカーさんの研修でも「殺菌剤は最終手段」であって根本的な解決策ではナイ!ということを学習します。

「強い芝」と「病原体が増殖し難い環境」づくりこそが対策

病害対策のキホンは、病原体が増えにくい環境づくり。たとえば住処となるサッチなどの枯れ芝管理・水の動き(流れ)の整備と、芝自体を強く育てる最適な時期の耕種作業、芝丈管理、施肥・季節要件に応じた要素管理など。つまりは芝生管理すべてがこれにあたります。「光・水・空気」を効率よく生命活動(生理代謝)に活かせる状態のコントロール。そこに適切な肥料を過不足なく与えることで健康体の芝が作られる。

それでも季節要因(環境)で一時的に病原体の増殖が勝る場合、これを一時的に抑える「殺菌剤」を選択して「効果的に」芝が優勢になる時期までやり過ごす。これが殺菌剤の役割。あくまで「補助役」なんです。

この記事でご説明する「ケイ酸」の供給は、芝側の防御力を強くする資材です。

芝生の病害が発生するメカニズムを正しく理解しよう

過去に農業マガジンに寄稿させていただきました。病害がなぜ発生するのかを知らない人は、まずはコチラの記事をお読みください。

www.almnet.co.jp

ここに書いたことは、病害が発生するためには、3つの要素が揃う必要があるということ。どれか一つ欠けても病害は成立しません。そのうち「誘因」は素因・主因の両方に影響を与えます。

素因: 病害にかかりやすい弱い芝(感受体)

主因: 病原体の存在

誘因: 病原体に有利で、芝に不利となる環境要因

僕のYouTubeショートをいつも見てくれている人は、よくお分かりだと思います。春先から梅雨入り(現在)までにヤッテきたことは、すべて上記の病害3要因への対策です。

芝生の基礎知識1分でわかるシリーズ - YouTube

ケイ酸資材は、素因の解決に役立ちます

6月の良く晴れた日に、イデターフを適量(1平米あたり薬量で4グラム程度)散布すると、根から効率よく吸収してくれます。

梅雨の長雨で激発しやすいカーブラリア葉枯れ病などの病原体は、サッチなど枯れた芝の中で増殖して雨の日などに生きた芝の角皮を食い破って侵入・感染するタイプです。

この季節のケイ酸補給は、その抵抗性を高めるのに役立ちます。

難点:イデターフは、あまり家庭向きではない(扱いにくい)

そもそも入手経路が限られています。Amazonなどネット通販では手に入らず、出光テクノマルシェ直販サイトでのみ手に入ります。

www.idemitsu-tm.jp

同じ出光でも、一般家庭向きのバチルス菌資材(肥料)イデコンポガーデンEVは、Amazonで手に入ります。

僕の独断と偏見による推察ですが、イデターフはゴルフ場用資材ソノモノ(家庭用にカスタマイズしていない)なのではないか?と思います。(一般の人も購入「は」できます)

構成に含まれるカルシウムなどが、水で希釈しても固結しやすく、普通の家庭用じょうろ散布だとスグに目詰まりします。家庭で散布する場合は、じょうろの先端部(ハスの実)を外して散布することをオススメします。(この場合は散布量が均一になるように注意することと、途中何度もかき回して沈殿しないようにしたほうが均質に撒けます。)

また、希釈前の粉は、注意書きによれば、継続して吸い込むと発がん性があるそうです。注意書きをよく読んで、くれぐれも気をつけてお取り扱いください。

イデターフはマニア向きか?

自ら検索して探し求めてくる人(知識を持った、所謂マニア向け)にだけ販売するために、このような直販サイトでのみ扱っているのかな?と推察しています。(完全に、僕の推察なので、明確な根拠はありません。間違っている可能性あり。)

僕も、不慣れな人にはお勧めしません。知識を持った「こだわるマニア」のみ、使うと良いと思います。

そもそもケイ酸は、土の中にあります。

ケイ酸は植物体を構成する物質の一つ(ただし必須要素ではありません)。枯れた植物が分解される過程で土の還ります。たとえば日頃からイデコンポガーデンEV等を使い、刈りカスや、サッチの分解を促進していればこれが効率よく土壌還元されていることでしょう。

誰にでもオススメできる基本はやはり、こちら。イデコンポガーデンEVの平時利用です。(それさえしていれば、あまりケイ酸自体を気にしないでイイ)

強力な素因(芝のチカラ)対策はやはり、アルムグリーン

芝の本体は根にあり!芝の根を強くする、芝の漢方農薬アルムグリーンは、やはり、最強の病害対策、素因解決に役立つ資材です。春先から梅雨入りまでの間、定期散布を続けておくと、この時期には強い根が芝の健康をしっかりと支えます。素因対策の代表例です。


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正確な情報伝達の難しさ・家庭園芸芝生上達のコツ

僕のYouTubeチャンネルでは、こういう大切なことを長年に渡り情報発信し続けているのですが、いろんな人の情報を搔い摘んで独自につなぎ合わせてしまう人も多い気がします。

仮に一つ一つの情報が正しくても、複合させると期待通りの結果が出るとは限らない。マイナスに働く可能性もあります。根拠なくMIXすることは「誰もやってないオリジナルに独り挑む」こと。これは冒険です。長期軸での結果がどーなるかは誰もわからない。

そもそも芝生の生育は人それぞれ。作業や資材については「これが答えだ!」というわかりやすいモノではなく、同じ場所でも常に判断と結果の連続で「概ねのストライクゾーン」が見えてくるものです。

「その年」の「その庭」の「その人」に合った「最適管理」は、その芝生固有のものです。

ネットの情報を参考にする場合は、その情報発信者にじっくり向き合い「どんな前提条件で」「何を基軸に」芝生を管理しているかをよーく掴むことが大切。その情報がご自身に適合するか否か判断してから活かしていくと、思いがけない失敗は避けられると思います。

そして、焦らず毎年2つでも1つでもイイから、自分の庭で「自分の手に負える(因果関係がわかる)こと」を試して結果を最後まで見る。このスローペースこそが、家庭園芸芝生上達の最大のコツだと思います。

今は、情報氾濫時代の濁流の中を僕たちは泳いでいます。だれでも情報が取得できる素晴らしい時代ですから、上手に泳いで有効に活用していきたいですね。

ちょっと脱線。

サッチ除去だって、コアリングだって、病害対策

まずは、これらの対策があり、その上で最後に残る主因(病原体の増殖)が生じやすい季節(例えば、梅雨の長雨、秋の長雨など、これが「誘因」)に、最後の最後、スパイスとして添加するのが、殺菌剤・・・ということなんです。

梅雨の期間、コケの発生を抑えるユニゾン水和剤

「殺菌剤こそ病害対策だ!」と思っていた方、その考え根本から見直しませんか?

YouTube 芝生の雑学 東京40まいるでは、芝生の生育に役立つ雑学を、2級芝草管理技術者・ゴールドグリーンアドバイザーの立場で、わかりやすく一般解説しています。

芝の生育に興味がある方は、チャンネル登録して長ーくお付き合いください😊

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次の動画かブログでお会いしましょう。

では、また!