芝はピークを過ぎると、植物ホルモンのバランスが変わり、護りの植物ホルモン、アブシジン酸の影響が強くなります。
アブシジン酸は、果物の果肉にたくさん含まれている植物ホルモンです。果物のタネは、果肉に含まれているアブシジン酸のおかげで真冬に発芽せず、実が朽ち果てる春を待つことができるんですねー。
果物のタネを植える場合、果肉が残っていると発芽しにくいといいます。これもアブシジン酸の仕業。
さて、芝草におけるアブシジン酸の働きは、まずは脇芽の発育抑制。これにより、9月中旬頃から芝の成長が緩やかになるんですね。
そして、葉の老化を進めると共に、葉緑素の形成を強くすることで、同じ細胞あたりの光合成時間(期間)を長くします。秋の芝が一旦、ものすごく濃い緑になるのはこのせい。日陰に強い芝、セントオーガスチングラス等では、特にこの性質が強く現れます。
無駄な細胞分裂を行わず、今ある細胞の寿命を活かして、葉緑素の働きをフル活用して炭水化物を生成。根の貯蔵器官にため込んでいるのです。すべては来春のため。
正常な芝の枯れ方
秋は、病害や薬害で枯れる場合と、正常に枯れる場合があり、知らないと見分けるのが難しいかもしれません。
正常な芝の枯れ方を知れば、「それ以外」が異常だとわかるようになるでしょう。
正常に休眠する芝は、葉の先端から茶色くなって、次第に地ギワのほうに、茶色がゆるやかに落ちていきます。
だから人の目には、一気に茶色くはならず、毎日毎日おだやかーに緑から茶色へと移り変わっていきます。
こんな風にして、次第に・・・次第に・・・上から下へ・・・まばらになりながら緑が落ちていくのが「休眠」の正常なプロセスです。
病害やトラブルによる芝の枯れ方
たとえば、薬害(濃度生涯や不適合など)の場合は、一気にある特定箇所が枯れます。
病害の場合は、緑の箇所と枯れの箇所が不自然にわかれます。
こういう枯れ方をした場合、病原は土や残渣に強く残っている場合が多く、春になって条件が整うと、再び猛威を振るう可能性が高まります。つまり、病原も休眠しているだけ。春を待っているのです。
症状が軽い場合は、春先、気温が上がってきてからの予防殺菌で抑えられる場合もありますし、壊滅的な被害で、スタートが出遅れることもあります。
そんな時は、土ごと入れ替えて貼りなおすのも、意外と近道だったりします。
気温が下がると病原は休眠、殺菌剤も効かない
季節は、10月下旬。多くの地域で、今年の「結果」は出ています。これからできることは数少ないです。
芝が休眠に入ると共に、病原達の多くも休眠に入ります。休眠中の菌たちはとても強い防御壁にまもられているので、殺菌剤はほとんど効きません。(そもそも殺菌剤は植物・微生物の生理活動に作用するものです。)
冬の間、「来年の春はどーするか?」じーっくり考えてみるのもイイですね。
芝生は「最悪でも張替え」で解決できる
そう考えれば、どんな失敗や害も、気楽に経験を楽しみながら積むことができると思います。そう、最悪は、張り替えりゃいいんです。何度でもリセットできる。
だから気楽にイキましょー。
病害発生のメカニズムについては、農業マガジンに寄稿しましたので、こちらをご覧いただくと、基礎知識がつきますよ~ 病害ってこういうもんなんだ?って。
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では、また!