9月からの芝生管理で留意すること(高麗芝など暖地型芝の場合)
この投稿で解説すること。
〇 真夏と秋では芝がどう変化するのか・・・成長優先から貯蔵優先へ
〇 枯れ方2種類の違い・・・壊死ではなく老化を促す
〇 秋の施肥は来春のための仕込み・・・プロセスに応じた適切な肥料選択と撒き方
〇 病害の発生要因が揃いやすい・・・適切な殺菌剤で早期に対策を
〇 芝刈りストレスの低減・・・切れ味確認 頻度低下・停止(刈止め)
高麗芝などの暖地型芝は、地上部の伸びが鈍化し貯蔵優先の代謝に切り替わります。今年の成長のための手入れは終わり、来年の春に向けた仕込みを始めます。
このブログと動画ですべてわかります。
真夏と秋では芝がどう変化するのか?
真夏の芝の代謝は、地上部の茎と葉の成長が最優先
秋口からは、地下の根(主に匍匐茎(ライゾーム))への貯蔵優先に変化する。そのために地上部の代謝を鈍化させる。
晩秋に向け次第に地上部の茎と葉のパーツを分解して根に回収する(地上部が枯れる)
この一連のプロセスを、支障なく進めさせてあげるのが、人間が担う「芝生の管理」です。真夏の考え方とはアタマを切り替えなければいけません。
気温が高くても、光は秋を告げている
植物は、さまざまな非生物的ストレス(外からの環境がもたらす負荷)の変化で季節を感じとります。
植物が感じ取る光のセンサーは、主に周波数が高い「青色」の光と、周波数が低い「赤色(ピンク色)」の光です。
日本では、6月の夏至を境に、次第に日光の射込み角の傾斜が強くなり、周波数が高い青い光が地面の植物まで届く割合が次第に下がってきます。光や電波などの電磁波は周波数が高いほど障害物の影響を受けやすく、低いほど影響が小さく遠くまで届きます。高周波の青い光は地球の大気や電離層で吸収拡散される割合が多くなるため、入射確度が傾くとより、その影響を受けやすくなりこの現象が起こります。
これは、人間の目でも、正午の日照(真上から射す光)の青白さと、朝夕の赤焼けの光の違いでわかりますね。植物は人間よりも敏感に、日光の射込み角の変化を光のセンサーで感じ取っています。
これによって、地上部の茎と葉の伸び方が変わり、鈍化してくるのです。
良い枯れ方(老化)と悪い枯れ方(壊死)の違い
秋の暖地型芝の管理で人間が担う役割は、芝を壊死させず、健やかな老化に導くことです。「壊死」というのは、外部からの予期せぬ攻撃によって芝の組織が死んでしまうことです。
壊死は、病原体に侵略されたり、人間が過剰なストレスを与えることで起こります。
一方、「老化」というのは、植物自らが自己の生体を分解・回収して、次世代の活用のために備えることです。
わかりやすい例では、稲が収穫前に金色に枯れるのは、茎と葉を構成する要素を分解し、未来につなげる種である「穂」に転流して蓄えるからです。芝の場合は、貯蔵庫である根(主に地下匍匐茎ライゾーム)に、分解物を貯蔵したり、穂を形成して転流したりします。
老化によって回収される主な要素
いわゆる、主たる肥料に相当する窒素・リン・カリウムをはじめ、自然界の土や空気からは取得できる量に限界があるものです。
分解・回収には大きなエネルギー消費を伴うので、芝の生体を構成する上位の要素である炭素・酸素・水素は、老化で回収されません。炭素は空気(二酸化炭素)から、酸素と水素は水(H2O)から、必要なときにいくらでも取り込むことが可能だからです。
秋の施肥は来春のための仕込み
秋の代謝は「貯蔵」のためのプログラムが作動しています。ここで、適切なタイミングで適切な肥料を与えることで、効率よく芝が吸収し、体内を転流して来春のための貯蔵に回すことができます。
まず、その前提として、芝の草高を自由に設定できる家庭園芸芝生では、葉を充分に長くし、日照が弱くなっても充分な光合成と気孔蒸散ができる状態をつくることをオススメします。
長い葉はより多くの炭水化物を生成し、葉の気孔蒸散は、土の中から養水分を取り込むための負圧(ポンプ)を生みます。
茎と葉をシャキッと立たせるテクニック
秋口にケイ酸資材を少量、使用すると芝が効率よく体内に取り込み、角皮細胞の補強に上手に使ってくれます。それにより芝の茎がしゃっきりと立ち、葉が効率よく太陽の光を受けてくれます。そしてケイ素の配置によって強化された角皮は、角皮侵入タイプの病原体への抵抗性をたかめます。(カーブラリアなど)
僕は2019年9月に使用して以来、秋口には毎年、ケイ酸資材を使っています。
ケイ酸資材イデターフは、出光の直販サイトでのみ入手できます。家庭向けではないので、こだわる人だけ覗いてみてください。
秋口にオススメの肥料
秋の入り口は、真夏とは代謝の速度が変わるものの、まだ土の中から充分に養水分を吸い上げるだけの代謝サイクルが回転しています。ここでオススメしたいのは、肥効がすぐに出て安定して一定期間効くタイプの粒肥料を土に撒くことです。
市販されている肥料では、バロネス芝生の肥料や、バーディーエースのような芝生専用の肥効コントロール型の肥料です。
初心者の方には、購入後にメールサポートが受けられるバロネス芝生の肥料を。熟達者の方には、重量あたり単価がリーズナブルなバーディーエース新1号細粒をオススメします。
もちろん、芝生用有機質肥料を使っても良いのですが、大切なことは「肥効がいつ出て」「いつまで持続」するのかを利用者が理解できて「コントロール下に置ける」ことです。その点、環境要因による肥効発現の変動要素が大きい有機肥料を使いこなすには、相応の経験とテクニックが必要で、秋の活用はやや難しい(気象や温度の変動幅が大きい時期なため)と「僕は」思います。※これは趣向によるので否定はしてません。
晩秋にオススメの肥料
芝の成長が完全に止まる頃には、根からの吸収効率も極端に落ちてきます。このような状態になる頃には、葉面散布を上手に使うと、もう一段、芝に分解吸収用の素材を与えることが期待できます。僕のオススメは、味の素のテカミンマックスを噴霧器で小水量散布(本当にサーっと葉にくっつける程度)です。
アミノ酸は、いわば窒素肥料のショートカット。テカミンマックスを上手に老化プロセスに乗せてあげることで、葉の構成要素(葉緑体他)を分解する過程にうまくアミノ酸が乗り、芝の体内での転流の流れに乗せて来春のための貯蔵の嵩増しに少々、有利に働きます。(上手なタイミングに施すことで、芝の秋の緑もちも少し長くなります。)
極端な話、健康な芝であれば、「何もしなくても」来春また生えてきますので神経質になる必要はありません。「来春のための蓄え」を意識する人は、秋の肥料テクニックを試してみてください。
秋の芝生の施肥の注意点
肥料を与えるときは「芝が利用できる時期」に肥効が出るようにきっちり狙うことです。肥効が出るまでのプロセスが多い有機肥料は、秋の芝生のコントロールには少し難しいと思います。
また、化成肥料についても、晩秋を越えて肥効を残すと、それは寒地型雑草のエサとなってしまうので注意してください。
必要な時期に、必要なだけ肥効を出して、休眠したときには肥効を切らす。これが磨くべきテクニックです。そのお庭の土の性質や日照などの環境事情によって、撒き方と時期は違うはずですので、毎年、肥料散布とその結果の因果関係を把握しながら、ご自身のお庭に適合したテクニックを磨く。結局、それが一番の近道です。
また、アミノ酸の葉面散布を活用する場合は、回数を撒きすぎないように注意してください。昨年、晩秋に2回目の散布をしたところ、11月が終わる頃になっても老化が完了しない事態が起こりました。
いつまでも緑があって良いような気がしてしまいますが、植物というのは季節にあったプロセスを辿らせてあげることも大切。暖地型芝が休眠できる時期は、年間でせいぜい3か月くらいしかありませんから休むときしっかり休ませましょう。
葉面散布は、いわば人間に喩えると「点滴」のようなものです。不必要に与えてしまうと不必要な結果を招きます。芝生の健康管理はオーナーさんの仕事。過剰にならないように注意しましょう。(僕は去年の反省から、今年は2回目の散布は行いません。)
秋は病害を発生させないほうが良い(回復できないから)
来春のための健やかな「老化」を促す上で、もっとも避けたいのが病害などによる壊死です。病害は、春と梅雨、そしてこの秋口に発生要因が揃いやすいです。
そして、休眠に向かいゆく秋の病害発生は、春や梅雨の病害とは違って「回復の余地」が限られます。つまり、壊死したまま終わることが多い。
過去に病害の発生傾向があるお庭では、その病害発生の特性に合った、殺菌剤プログラムを組み、発生しそうな時期の少し前に殺菌により菌数を減らしておくことがオススメです。
ご参考までに、我が家の芝生では、秋は、ラージパッチが発生し、秋のうちに感染した春はげ症の病原体が春になって発症し、いつまでも緑にならなかったことがあります。これらの病原体は土着性があり、一度発生すると、そのお庭では同じ条件が整う度に毎回繰り返す傾向があります。
それ故、庭の芝生の「持病」と考えて、適切なプログラムを組みます。花粉症の人が花粉の飛散が本格化するシーズンよりも前に薬を飲み始めるのと同じようなものです。
我が家で秋に使用している、ラージパッチ・春はげ症感染防止対策の薬剤は次の二つ。
オブテインフロアブル
浸透性に優れ、芝の体内で導管を通って上方移動する性質があるので比較的長い期間、病原菌の増殖を抑える効果が期待できます。高い温度での薬害も出にくい特徴があるので、秋口の予防殺菌に最適です。
クルセイダーフロアブル
ラージパッチに卓効がある治療殺菌剤で、予防効果も期待できます。オブテイン散布の1か月後頃に散布することで、オブテインが効かない耐性の菌も含め効果的に防除できる確度があがります。この二つの薬剤の組み合わせはとても相性が良いです。
芝刈りは有害なストレス。芝の代謝の落ちにあわせて頻度を落とし、刈止めしましょう
芝刈りするとどんどん密度が濃くなるのは、芝が生育旺盛で代謝が盛んな時期だけです。秋になって貯蔵モードに入った芝にとっては、芝刈りによるダメージ負荷が大きくなります。切れ味の悪い芝刈り機での刈込みは、芝を衰退させたり傷口から病原が浸入する原因になります。芝刈り機の刃の切れ味を点検しましょう。
芝刈り頻度を落とし、適切な時期に刈止めをしましょう。
毎月1回、旬な芝生の手入れの基礎知識解説と質疑応答ライブを配信しています
毎回、さまざまな分野に強みを持つ、芝生有識者の皆さんが出演(回答)していますので、日頃からの芝生の疑問の解決にお役立てください。もちろん無料一般公開です。

興味ある方は、YouTube東京40まいる 芝生の雑学をチャンネル登録してください。
9月も、10月からの芝生の手入れに役立つ基礎知識をテーマに配信する予定です。
次の動画か、ブログ、ライブ配信でお会いしましょう。
では、また。
1級芝草管理技術者 プラチナグリーンアドバイザー 土づくりマスター 緑の安全管理士
芝生の雑学 東京40まいる 宮川昌広































































































































