芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

【Jリーグ】フクダ電子アリーナの芝生管理事情(家庭芝生より遥かに難しい)

「芝」は生き物。「芝生」は人間が造る究極の不自然。自然界には無い、整った緑の絨毯を「人の手で」造るのが芝生。そこには「人」と「植物の命」のかかわりが必ずある。家庭でも、公園でも、スタジアムでも。

今回、学ばせていただいたのは、Jリーグ ジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアム、フクダ電子アリーナのピッチ管理です。

スタジアムピッチへの関心はなぜ?

日本の家庭園芸芝生の現在の(商用・知識)市場は、ゴルフ産業からのブレイクダウン主体の変遷だと僕は思っています。

しかし「ゴルフ場コース」と「家庭芝生」は環境の前提がまったく異なることも多々あります。
特に大きな違いは「日照」です。

サッカースタジアムだから美しいのではなく、サッカースタジアム“なのに”美しいのです

日照条件が悪いと芝は虚弱体質になります。大きな屋根に囲まれたスタジアムのピッチ管理は、その陰との闘い。1日の日照時間は限られています。

特にこのフクダ電子アリーナの屋根は360 度。開口部が広いとは云え、高い屋根が作る日陰は芝の生理活動を鈍化(エネルギー源生成や体内の新陳代謝を停滞)させる要素です。
「虚弱体質になりがちな芝の生命を、プレーに耐えられる芝生に維持する」というのが、スタジアムグラウンズマンたちのお仕事。芝の植物生理を熟知しているからこその、プロの技の宝庫です。

スタジアムピッチは広義の「園芸」

「園芸」とは、区画で囲まれた、境目が明確な土地の植栽を管理することだと、グリーンアドバイザーの研修で学びました。
特定の範囲の土地の気候や土、そこでの生育(植物生理)を徹底的に分析して、その土地での最高の芝生に仕上げる。この観点において、スタジアムピッチ管理と、家庭園芸の芝生管理の追究は共通点があり、僕はピッチ管理のプロ技術に興味深々なのであります(^^)

好立地ゆえの過酷な踏圧 床締め

家庭園芸の分野では「床砂は締まらない」と誤解されているケースもたまにアリますが、砂は選手や審判の踏圧やローラーがけなどの整地で締まります。
利用頻度が高いスタジアムほど、踏圧による影響を大きく受けます。

フクダ電子アリーナの最寄り駅「蘇我」は、JR東京駅から特急で僅か30分少々の好立地。利用頻度が高く、ほぼ毎週末、スポーツ試合等が開催される他、様々なイベントが開催され、ピーク時は週2〜3回使用されるなんてこともあるとか。
見学させていただいた日も、アウェイの清水エスパルススタンドは平日にもかかわらず満席です。(これはエスパルスサポーターの行動力の面も多分にありますが(^^))

興行拠点としても重要な施設であるフクダ電子アリーナは、利用頻度が高く、充分な養生期間が殆どとれない中でのピッチコンディション管理が求められます。
これって最上級に難しい課題ですね🤨

ピッチの床土の硬さは・・・


実際のところ、IAIスタジアム日本平に比べると硬めです。これは比較対象が悪い(^^;)日本平は、Jリーグピッチの規格の中でも日本一柔らかいスタジアムなんだと思います。
tokyo40mile.hatenablog.com
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正直なところ、フクアリの床の硬さはいわゆる見た目から想像する「芝生」の柔らかさ。そう、これでも充分柔らかいのです。

利用頻度が高く、日照条件が悪く、充分な養生期間が取れないフクダ電子アリーナでは、シーズン中は芝の回復力に期待する大胆コアリングができなそうです。

繊細な判断に基づくスパイキングや、常に苗を植え続けるなどこまめな管理・補修の連続。そして風のながれ。
このスタジアムの環境でできる、芝の植物生理の限界値の範囲内で、ベストなコンディションを引き出す。
この土地のこの環境の、この使用状況にあわせた最適管理。
ピッチのグラウンズマンのお仕事って、まさに命を扱う主治医。芝生のお医者さんなんだなぁーと思います。

次のブログでは、一回、他のお話をさせていただいたあと、近いうちにフクダ電子アリーナのピッチ見学のお話に戻ります。
お楽しみに

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