芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

試合後の芝生 【Jリーグ】IAIスタジアム日本平で究極の芝生管理の神髄を学ぶ【後編】

清水エスパルスvsヴェルディ戦終了直後のピッチをじっくり見学させていただきました。試合後も西陽を浴びて素晴らしく美しい。近づいて見ないと試合前と何も変わっていないように見えます。おそらく観客の皆さんからはそう見えたことでしょう。
実際のところ今日の役割(試合で選手達のパフォーマンスを発揮してもらう)を果たしたピッチは驚きの連続。

これ、選手のスパイクの跡。

選手の蹴り出すチカラをターフがしっかりと受け止めて、スパイクが利いた証だそうです。

試合後、至るところにこのスパイク跡がありました。

傷んだところは、試合終了直後に目砂入れ

ライン際や、ゴール付近など激しいプレーがあった所は、スパイクで芝が飛んだりしています。


こういう所は、傷口が乾燥しないように試合後すぐに目砂を入れるんだそうです。





こうすることで芝が自分のチカラで再生してすぐに埋めてくれます。目砂は人間で云う絆創膏のようなもの。
いつも試合がおわった直後にこうして芝の傷口を護って治癒力を引き出しているのです。

魔法のピッチ

ゴール裏のウォーミングアップエリアは傷みが激しい。
狭い場所を選手が何度もハードに動いて地面(ターフ)の感触を試し自らの身体能力を最大値に高めてゆく場所なので、あの美しかった芝がこんな感じになっています。


こんなところも、目砂を入れて芝刈り・転圧1回で元通り回復すると云うんだから驚きです(^^)
次の試合は水曜日のナイター。たった4日後には芝が育って元通りになおるそうです。
まさに魔法のピッチですね。

踏圧の影響を体験

「踏圧で土が締まる」とよく言いますが、実際のところ締まった土(砂)と締まってない土(砂)を同じ場所で比べたことは、今までありませんでした。

ここは副審が試合中、常時ライン沿いに移動し続けるゾーン


教科書的には、サッカーグラウンドで最も傷む場所と云われるゾーン。

ご覧の通り、ラインに沿って肩幅ほどの範囲に副審のスパイク跡がたくさんついていますが芝は傷んでいません。
ここで佐野さんが「ラインに向かって一歩ずつ歩いてみて!」って仰ったので、歩いてみました。
芝の縁からの踏み心地は、前回のブログに書いた「体操競技の床」のような柔らかく弾力性がある感触。
しかし、副審が踏んだ場所だけ、硬い。カチカチじゃないんだけど、他の場所と比べて明らかに詰まった感触があります。
これが踏圧による砂(土)の締まりなんですね。この感触を体験できたのは貴重な経験です。ハッキリ違いがわかります。

前回のブログでお話ししたとおり、IAIスタジアム日本平は、Jリーグスタジアムの中で最も土が柔らかく管理されたスタジアムなので、副審の踏圧で締まった床土部分でも、一般的なスタジアムと同じか、やや柔らかい位だそうです。

芝という「生き物」を扱うお仕事だからこそ

佐野忍さん率いるグリーンマスターズ清水のターフ管理には随所に芝の命に配慮した工夫があります。

ゴールのネットの固定方法にも芝へのおもいやり

球が抜けないように下部を地面に固定する必要があります。

一般的には杭を打ち込んで固定したり、錘を乗せて固定するそうですが、これは多少なりとも芝生を傷める方法。
IAI日本平スタジアムでは杭や錘を使わず、地中に設置したアンカーにワイヤーをターンバックルで張る方法をとっていました。


グリーンマスターズ清水が開発した方法だそうです。
この方法なら芝を苦しめる錘も、杭も要りません。

試合時に設置される電光表示装置の土台にも工夫が



この穴は特注で加工して開けているそうです。標準仕様では、芝が荷重から逃げる空間は確保されているものの、空気穴が小さく、窒息や蒸れ回避の観点では充分とは言えない。
穴を特別に大きく開ける加工をすることで、土台の中に空気の流れをつくり、芝が円滑に呼吸できる環境を確保しているんです。
試合後、撤去するとこんな模様がつきますが、なにもしなくても芝が回復してくれるそうです。


このマス目一つ一つに「空気穴」からの空気が届いているわけです。

芝の命を知り尽くしているからこその、愛情ですね(^^) それがハイクオリティーなターフを保ち続けることに繋がってる。

床土の構造から芝の命管理まで、隙のない究極のスポーツターフ。
芝という植物は、目的・気候・環境・社会的意義によって、実に様々な管理がある。
その場所での究極は、その場所に適合させて人間側が見つけるもの。

共通する最も大切なポイントは「芝の命を知る」こと。
大前提として、芝が育ちやすい状態とはどういうことかを理解することだと思います。

スポーツターフクオリティーは心の結晶

今回学ばせていただいた、IAIスタジアム日本平の究極のターフ管理のケースでは、グリーンマスターズ清水の卓越した芝草管理技術のみならず、施設開設30年の歴史の中で、スタジアム運営側も、清水エスパルスチーム関係者側も「ターフクオリティーを大切に運営する」という意識が当然のように根付いています。

そこには、清水エスパルスがどんなに負け続きで辛い時でもアイスタに足を運び、応援し続ける根強いファン達の存在と、ファンに感謝し地域に積極的に貢献する清水エスパルスチームの志があります。

スタジアムのターフクオリティーは、ファンも含めたスタジアム運営全体のエスパルスコミュニティの集大成として成立する「心の結晶」だということを学びました。

そんな中、目の当たりにした待望の勝利の瞬間!
歓喜にわくファン達の地響きのような大合唱!
この日のことを生涯忘れることはないでしょう(^^)
全体がドラマ、人間模様の結晶なんです。

芝生への探究心で繋がる人のご縁の連鎖

現場に行かなければ決して学ぶことができない「場味」。佐野さんとスタジアムの「空気」に触れ、芝生観といいますか、世界観が変わってしまうくらい影響を受けました。
芝生は「命を活かす技術力」と「これを尊重する社会学」の結晶。そう実感し、さまざまな場面での芝生活用を理解する際の大切な要素「芝草管理の真髄」を授かりました。

グリーンマスターズ清水のチームの皆さんには、本番のお忙しい中、見学させていただき、あたたかくお導きいただいて深く感謝しています。ありがとうございました!

私事ではございますが・・・

芝草管理技術者2級を勉強しておいて本当によかった(^^)こういう学びの機会を活かすために、素人基礎知識レベルから脱却したかったんです。

そして、当初、今回の受験を諦めようとしていた僕を、猛烈に学習に引き込んでくれた芝学友、イクシバ!プロジェクト尾木さんの存在があります。
情熱をもって「諦めるな!私たち、芝学友じゃないか!」と。あれがなかったら僕は2級レベルのプロ知識を知らずに今日を迎えていたことでしょう。
佐野忍さんのお話を聞き、心動き理解するたび、尾木さんへの感謝の念が込み上げてきました。

僕の芝生への探究心は、人のご縁に支えられています。
貴いことです。このご縁に感謝してこれからも大切にしていきたいと思います。

大きな反省点

僕はこれまで全然、サッカー観ない人だったんです。
せっかく佐野忍さんがサッカーの歴史的偉大な選手のお話をしてくれても「そーなんですかー」しか言えない自分が悔しい・・・
こんどはサッカーの勉強しなきゃ(^^;)
清水エスパルスは、僕の人生最初のJリーグ試合。
目の前で勝利を魅せてくれました。
ここから僕のJリーグが始まります。
今回のすべての学びの感動と共に、清水エスパルスの勝利があります。
ありがとう!清水エスパルス(^^)応援します!!

2回にわたるブログ、全部読んでくれた方、ありがとうございました。
この学びはこれからに強烈に活きます。

YouTube「芝生の雑学 東京40まいる」では、芝生がもっと好きになる情報をお伝えしています。

興味がある方は、ぜひ、チャンネル登録をお願いします。
https://youtube.com/@turfgrass芝生の雑学 東京40まいる - YouTube

次の動画か、ブログでお会いしましょう。
ランキングクリックしてね!

では、また!