芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

国立競技場のピッチで学ぶ ここに至るまでの全経緯と努力・・・そして奇跡の連鎖

国立競技場の芝生、ピッチ管理を学ぶ

我が芝生の大先生、佐野忍さんからのお声がけで、Jリーグ試合当日の国立競技場のピッチを視察させていただく機会に恵まれました。

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日本のピッチ界を支えるレジェンドお二人のツーショット!

このショットは、試合終了直後に撮影。芝生マニア、スポーツ観戦マニアにはタマリマセン!!会うや否や、清水エスパルスジェフユナイテッドの今日の試合を語り合うレジェンドお二人です。何をお話されていたかは、内緒www 

左:佐野 忍さん 右:池田 省治さん

試合前、早めの時間に池田さんにお話を伺うことができました

グランドキーパー室にご挨拶に伺い、お忙しい中ですが池田さん直々に貴重なお話を伺うことができました。芝生愛好家の皆さんにも共有します。時間にしてほんの15分位だったと思いますが、学びの宝庫です。

ここは国立競技場。おそらく日本一多様なスポーツで使われるスタジアムです

味の素スタジアム(通称アジスタ)も池田さんがピッチ管理しています。アジスタは、東京ヴェルディーとFC東京の2チームのホームスタジアム。毎週末は当然に試合が入っているし、週に3回や4回試合でピッチを使うことなどザラだそうです。

しかし、国立競技場の利用頻度は、その比ではない

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例えば、お正月などは、大学サッカーと、高校サッカーと、大学ラグビーが連日開催され、9日間で8試合が凝縮されるなど、一極集中型の利用が特徴。

壁にかかっていた7月のカレンダーボードも、文字がビッシリ!!「整備の日程か?」と思っていたら、全部、「ピッチ利用」の予定だそうで、特定のスポーツではなく実に様々な予定です。これが「サッカースタジアム」との違いでしょうね。

(これは、一般公表のスケジュール。実際は、このイベントの間にも、ビッシリと様々な利用予定が詰まっています。)

www.jpnsport.go.jp

海外からナショナルチームが来れば、国立競技場で迎えるのが通常だし、そのような海外チームは、本番試合の前日に練習でピッチを使ったりする。

その練習の度合いもチームによりまちまち。単なるウォーミングアップ(芝感覚合わせ)の場合もあれば、本チャンでガンガン芝を荒らすトレーニングをすることも。

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これほどまでに利用頻度が高いと、試合でピッチが荒れることもあるそうです。

マスメディアなどでは、芝の根がスパイクで地表に飛び出したりすると「悪いピッチ」とコメントすることがあるそうです。しかし、池田さんは仰っておりました。

ピッチの質は、見た目ではなく「選手にとって」心地よく能力を発揮できたか否かで評価されるべき

夏芝のスタジアムは、縦横無尽に根が張り巡らされているのだから、スパイクで根が地表に出てくるのは、ごく普通のこと。冬芝でつくったピッチと見た目で単純比較することはできない。

サッカー競技でもっとも過酷といわれる副審エリア。試合後も芝が耐え抜いています

ラグビーなどスパイクに高負荷をかけるスポーツでは、ある程度芝が多少壊れてくれたほうが良い場合もある。スキーのビンディングと同じ。ある一定を超えたチカラは、逃がして開放することで選手が身体を傷めないこともある。

ピッチはそういう機能も担っている。

ターフクオリティーは、選手が評価すべきものであって、映像みてイメージで評価するものではない。と。

国立競技場の日照は、味の素スタジアムの半分しかない

前述の味の素スタジアム、けっして日照条件が良いわけではなく、日照が芝にあたる率はわずか35%程度だとか。

しかし・・・国立競技場は、アジスタの半分の日照しかない。つまり日照率17パーセント前後。僕が視察に行ったときも、この状態です。太陽はまだ高い位置にあるのに、ピッチにまったく日光があたらない。

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スタジアムは、どこもコノ観客席を覆う屋根がつくる日陰との闘いです。

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風の流れを計算して設計されたスタジアム

芝の生育には、葉の蒸散が効率よく行えることがとても大切。そのためには、芝の表面の空気を澱ませない風の流れをつくる必要があります。

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見た目には、陸上トラック(人工芝で埋めている部分)のギリギリまでスタンド1層席がせまる構造。芝の上の空気の抜けが悪そうに見えたので、聞いてみました。

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国立競技場は、設計時に風洞実験をして風の流れを計算しつくされているので、防火扉を開けさえすれば、風がちゃんとまわるように設計されている。

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また、1階席にはお客さんのための送風機もあり、空気が積極的に動くとのコト。

それでも、掘り下げたグラウンド部分は、空気が滞留しがちになるので、送風機を入れて風を強制的に動かして蒸散を促しているそうです。空気の動きが芝をつくる。

家庭園芸芝生の在り方や、芝生に立ち入るときのマナーなど

実は、グリーンキーパー室で池田さんのお話を伺ったのは、ほんの15分少々です。そのわずかな時間で、ピッチのみならず「芝生」についてのお考えなど、様々なコトを伺うことができました。印象的だったことを、記させていただきます。

(※ 文責はすべて東京40まいるです。実際にそういう趣旨でおっしゃったかは、定かではありません。)

元々、日本の家庭には子供が強く育つ芝生があった

畳。あれはいぐさで作った植物のマット。昔から子供達は畳の上で育ち、植物のマットの上で遊び、そうしていく中で丈夫に育っていった。広義では家の中に芝生があったのと同じ。

ところが、生活様式が変わり、家の中の草マットはなくなってしまった。ゴツゴツとした床の上では、安心して暴れることもできない。そうして子供の身体能力は下がり、弱い子に育ってしまう。

これを補うために、日本の家庭はどんどん庭を芝生にして、子供を遊ばせるべきだ。

小さな子供が、安心してハイハイできる芝生をどんどんつくるべき。家庭の芝生を増やしていって欲しい。

日本人のピッチでのマナー

ヨーロッパやアメリカでは、スポーツについての志と理解が高く、一般の人にピッチを公開しても、けっしてラインを踏まない。試合におけるラインの重要性を知っているから。

日本では平気で革靴のままピッチに上がり、ラインを踏みつける人がいて残念だ。こういうマナー、思いやる心が自然に備われば、日本のスポーツ振興はもっと成功すると思う。ワールドカップ三笘のVAR判定を見たじゃないか!そういう1mmを大切にする心が選手達を支えることになる。

マナーの悪い大人より、未来ある子供達をピッチに招いて、芝の感触を味わってもらいたい。そういう思いがある。

 

ここまでが、池田省治さんのお話から僕が学んだコトです。ご多忙を極められる中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。芝を学ぶ者としてこの上なき幸せな時間でした。

4年前からの憧れ、国立競技場 人のご縁の奇跡の連鎖でこの地へ

趣味の自分の庭の芝生YouTubeしかやってなかった僕が、今回、どうして国立競技上のピッチを勉強しているか・・・その全経緯をお話しましょう。不思議な人の縁の連鎖の連続です。

僕のYouTubeチャンネルの開設は2019年。ハンドルネーム「東京40まいる」の”東京”は、勤務地を表すと共に東京オリンピック」を意識してつけたキーワードです。

チャンネル開設当時、国立競技場ば建設中で、何度もこの様子を見にきました。


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今回入場した「3番ゲート」。工事中に外から覗いたことがあります。あの当時はまだ、日本芝草学会にも入っていなかったので、本当にたった一人で芝生の勉強をしていました。「いつかは、国立競技場のピッチを学びたい!」そんな思いで撮っていました。


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僕の人生の転機は、YouTubeチャンネルを通じて、最初の専門家、アルム農材の沖さんにめぐり会ったこと。


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専門家を前に、素人の自分の「身の程」を知りました。せっかくプロが「自分のためだけ」に時間を使ってくれているのに、あまりに知識が無さ過ぎて、会話レベルが合ってない。

この日を転機に、芝生専門家の方々に「直接お会いして対話できる素養」を身に着けたい!と思ったのです。2020年10月10日のことです。

この対談の直後、独り飛び込んだのが、日本芝草学会。

jsts.smoosy.atlas.jp

そこで知った、黎明橋公園 イクシバ!プロジェクトの尾木代表の心、芝生を愛情をもってみんなで育てる素敵な取組みに僕の心は強烈に惹かれます。


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この記事を”僕が”書くことになるとは・・・当時はまったく想像してなかったw

jsts.smoosy.atlas.jp

その、イクシバ!プロジェクトの黎明橋公園で、偶然、出会ったのが佐野忍さん。

2021年10月のことです。

この動画の中で「芝生の神様に会った!」と言っているのは、佐野忍さんのこと。

この日、初めて、佐野忍さん、綾さん親子にお会いしたんです。


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でも、この頃の佐野忍さんとの会話・・・あまりに自分がド素人でした。

まず、用語の意味がわからない。

佐野忍さん: 「栄養繁殖の芝の場合は・・・」

東京40まいる: 「エイヨウハンショクって何ですか??」

 ・・・これ、実話ですからねwwww(2021年10月のジブン)

 

最低限のことは勉強しておかないと・・・心底思いました。

この日から、尾木さんと東京40まいるは、芝学友になって、一緒に3級も、2級も互いに切磋琢磨して学び、2年の時を経て、二人とも 2級芝草管理技術者になりました。

特に、2級はあまりにも難しいうえ、プロじゃないから受験資格もない。特例のレポート審査を通過しなければ受けられない。

土壌医検定に、芝草管理技術者3級に、グリーンアドバイザー。少々、勉強疲れしてたこともあり、YouTubeにも復帰したい(^^;)だから、僕は「受けない」と言っていました。(弱音吐いたワケですwww)

そこに、尾木さんから「私たち、芝学友でしょ!」「あきらめないでー!」と。

なんか、僕・・・大切な、たった一人の学友を裏切ってるカモ・・・(^^;)

この尾木さんの情熱が、僕をインスパイアしたんです。

すぐにレポートを書きました。そして受験資格を得ました。

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これは、YouTube東京40まいるの活動(バイオスティミュラントのアルムグリーンと、未来の芝生管理オートモア)の先進的取組みが、ある意味「認められた」瞬間でもありました。とても嬉しかった。

そして、2級芝草管理技術者を受験して、尾木さんも、僕も、合格しました。

2級レベルを学習すると、芝も、土も、害虫も、病原体も、細胞・分子レベルで説明できるくらい、深い構造をを学びます。3級とは段違いの内容でした。そして難しい。

しかし、芝生マニアの私たちにとっては至福でした。

「探し求めていた答えはココにある。(コタココ)」

つくづく、受験してよかったと思います。

佐野忍さんが仰ることは、全部理解して吸収して、素養として身に着けたい!
それがが、僕たち「芝学友」の学びの原動力です。

人のご縁は、キセキの連続。ドラマより、映画よりもっと、神秘的です。

でも、単なる運任せじゃない。運をモノにするために、自分自身、相当ムチャして努力もしています。

努力×幸運=夢の実現

夢を現実にするってこーいうことなんだと思います(^^)

日本芝草学会に入りませんか?

なんだ?勧誘カヨ!・・・とお思いかもしれませんが、勧誘しますwww

なぜなら、僕自身の人生を変えたから。僕はここに入るまで「書籍こそが絶対!」だと思っていました。でも違った。書籍はその一端(多数ある視点の一つを云っている)に過ぎない。本当の学びは、本当に実践している人達を見て、自分が感じて、見識を広めていくものなんだということを知りました。

jsts.smoosy.atlas.jp

本気で芝生を勉強している人、芝草学会に入会して積極的に「見学会」や「情報交換会」に参加することが、一番の学びの近道だと僕は思います。

超超超・・・ド素人の僕が、たった独りで飛び込んで掴んだ事実なので、これは本当です。芝生に興味があって、もっと学びたいと思っている人は、ぜひ、芝草学会への入会をご検討ください。

年会費はたったの6000円。そこで得られる情報と学びはプライスレスです。

入会に不安がある方、僕のYouTube動画にコメントいただければ、いくらでもサポートします。ぜひ、ご検討を。素晴らしい世界が拓けます。芝生はもっともっと面白く!

佐野忍さん、今回も貴重な学びの場に連れて行っていただき、ありがとうございました。

思えば、僕のスタジアム実地視察は、これで5か所目。学びは6か所目です。

tokyo40mile.hatenablog.com

  • ニッパツ三ッ沢球場(日本芝草学会)
  • 国立競技場(池田省治さん(佐野忍さん))

少しずつですが、いろいろと見えてきました。まだまだ未熟者ですが、これからもご指導、よろしくお願いします。

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