芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

サッチ取りの脅威は軸刈り 芝丈と草高は違う~転圧ローラーの活用~

サッチ取り後の芝刈りで多発する「軸刈り」による芝のダメージ

芝が生きて活動している季節の「サッチ取りトラブル」で一番多いのは、芝刈り機による軸刈りです。芝の健康を保つために実施したサッチ取りが、かえって「芝を傷める」ことになっては本末転倒。このブログでは、なぜ、サッチ取りをすると軸刈りになるのか?そして軸刈りしないために必要な「転圧」について解説します。

サッチ取り後の芝刈りで軸刈りになった芝生

芝生の「刈込高」と「芝丈」は違う

芝生についてのよくある「誤解」の一つとして、芝刈り機の刈込高=芝丈と思い込んでいたり、そうイメージしている人が意外と多いように感じます。

芝刈り機の刈り高設定は、あくまで、車輪の接地部から刈刃までの距離を設定しているモノです。

つまり「刈込高2cm」と言ったら、芝刈り機の車輪が芝生を上から踏んだ状態を起点0cmとして、概ね2cm上の高さ(※実際はもう少し低いことが多い)で刈り込むということ。

だから、仮に芝刈り機の刈込高設定を2.0cmで設定しているとしたら、実際の芝の茎+葉の長さは、もっと長いハズです。

芝生草高という考え方

芝生は、葉一本一本の長さ(芝丈)で表すのではなく、地ギワからの「厚さ」で計測するべき。そうすれば、世の中のさまざまな芝生の厚さを、同一の基準で比較することができる。藤崎健一郎先生(日本大学教授・日本芝草学会校庭芝生部会長)が考案したのは、「芝生草高計」という「芝の厚さ」を計測するモノサシです。

芝生草高計

モノサシの先端部を、芝の根元(地ギワ)に差し込んで、そこから芝生の表面までの距離を測るというもの。

芝生「草高」の計測 2021年11月23日撮影

この方法であれば、自分の庭の芝生と、他の人の家や公園などの芝生の状態(厚み)を比較したり、一律の基準で「芝生の厚さ」を計測することができます。

日常、「芝生の刈り高」でイメージするのは、芝丈ではなく、実は「草高(芝の厚さ)」なのではないでしょうか?

サッチ取りをすると、芝が立って本当の「芝丈」が露呈する

芝生に溜まる「サッチ」は、芝の新陳代謝(新しい細胞を生成し、古い細胞と入れ替わる)によって、芝が脱ぎ捨てた死骸です。芝の葉や茎は、ちょうど長ネギの構造のように、中心部から新しい細胞をどんどん生成して、外へ外へと古い細胞を押しやるように脱いていきます。

こうして、芝の根元付近の地ギワ(土の上・土の中)には、芝に絡みつくようにして、古くなった死骸(サッチ)が溜まっていきます。

これをほぐして、取り除く(減らす)のがサッチ取り作業です。

芝の根元をほぐすと、たくさんのサッチ(芝の死骸)が出てくる

ここで、はじめて本当の「芝丈」を見ることになります。

根元からサッチをほぐして地表に引き上げる(つまりレーキで搔く)際、寝ていた芝の茎や葉もほぐされて、直立に近い姿勢になります。

サッチ取り前の芝生(手前)とサッチ取り後の芝生(奥)

我が家の芝生では、ロボット芝刈り機オートモア305や、キンボシジャパンモアーで、2.0cm設定で芝刈りしていました。(実際の刈込高は1.7cm前後に該当するようです)

サッチ取りレーキで、きれいにサッチを取り除いた後に芝丈を見ると、驚くことに5cmを優に超え、長いものでは10cmに届きそうな個体もあります

そのシーンは、このライブ配信映像でご覧ください。ガチです(^^)


www.youtube.com

ご覧いただいてわかるとおり、サッチ取り前と、後では、芝生草高がぜんぜん違う

このように芝が立った状態で、いつもの刈込高で芝刈り機をかけてしまうと・・・

このように「軸刈り」となってしまいます。

軸刈りとは、葉の部分をすべて刈り取ってしまい、茎(白または茶色っぽい部分)がむき出しになっている状態。

葉をすべて削り取られてしまったので、その部分は、光合成することができません。

軸刈りによる芝のダメージ(真夏は致命的)

光合成ができないということは、エネルギー源である糖(炭水化物)が外から得られないということ。人間でいえば「断食」と同じ。

さらには、葉が無いので、体内の導管に負圧を生じさせることができません。だから水や養分を吸い上げる能力も著しく低下もしくは停止します。

運よく葉が復活するまでの間、いわば、成り行きと、芝の生命力任せの時間を過ごすことになります。

ただでさえ、全力で活動し、つくったエネルギー源はすべて活動のために使いつくしているのが、真夏の季節。ここでの軸刈りは、まさに芝にとっての試練です。

直前に撮った画像との差異は一目両全

サッチとり作業日の朝、撮影した画像

軸刈りをしてしまったら・・・人間にできることは

芝の自律的な水分の制御(体内循環)が機能不全を起こしていますから、地表部は過度に乾燥しやすくなります。一方、根は水分を効率よく吸い上げることができませんので、あまりにも水を過度に与えると根が呼吸できず細胞が死んでしまう「根腐れ」を起こしやすい状態。

だから、地表部(芝の根元)はやさしく薄く目土入れをして、過度な乾燥を防ぎつつ、少量の散水をやや頻度多く(例えば少量を朝・夕)します

そして、他の葉からの糖の供給に期待するために、刈込高をやや高めに設定して、生き残った葉の受光面積を大きくします

それ以外は何もできることはありません。

※肥料は葉があるからこそ吸収されるので、ここで施してもトラブルの素。

真夏のサッチ取りは、その後の転圧が大事

このような軸刈りを避けるためには、サッチ取り作業で起きてしまった芝を、地面になじませる作業、転圧を充分に行うことが大切です。

転圧は1回ではダメです。芝が元通りの芝草高に戻る(低くなる)まで、念入りに芝を落ち着かせる作業が必要です。たいていは一晩明けて、朝・夕転圧すれば、概ね元の厚さに戻ります。

転圧というのは、何も転圧ローラーを使うことダケではありません。人間が足で踏むのも転圧です。板で押し付けるのも転圧。

転圧して芝を落ち着かせてから芝刈りすれば、ダメージはほとんど無い

転圧の効果はこの画像でご覧ください。

<転圧前>サッチ取り翌朝の状態

転圧作業前の芝生 モフモフです

<転圧後>同じ朝、転圧作業後の状態(日照からわかる)

芝が地ギワに落ち着いています

tokyo40mile.hatenablog.com

この状態で芝刈りすれば、ほとんど軸刈りにはなりません

充分な転圧後に実施した芝刈り後の状態

「軸刈りエリア」と「転圧エリア」の経過観察開始!

さて、懺悔いたしましょう(笑)

初日、僕はミスりました(^^;)

真夏の猛暑の中、声はかすれ、思考がまわっていなかったのかもしれません。芝刈り機を動かした直後、強烈な手ごたえを感じつつも、冬に実施した枯芝の低刈りの感覚を懐かしく思い、ジャパンモアーを進めてしまいました。

ジャパンモアーだから、進めることができたのかもしれない。ナイスバーディーモアだったらもっと抵抗が強かったはす・・・

「やばい・・・やってもーた」の初日。それが右半分のエリア。

初日の作業エリア(右半分)

2日目、改心しました(^^)

ミス、妥協なし。これぞ、東京40まいるクオリティー(?)

・・・ってことで、我が家の庭は、失敗エリア(奥)と成功エリア(手前)ができましたので、これから経過観察に入ります。

しかし、サッチは減らしておくべきです

こんな量のサッチが、芝の地ギワに堆積していたのですから、真夏にコート着ているようなもんです。

6月~7月の2か月間でこんなにサッチが生成されていた

サッチ取りをすると、確実に芝生の見た目は悪くなります。美しさが回復するまでは、少なくとも3週間が必要です。

真夏のピーク時期から逆算すると、やるなら早く。出遅れるならやらないほうが良いです。芝生の状態によっては、失敗のリスクは付きまといます。

悩むくらいならやめたほうが良いです。

サッチ取りでランナーが飛び出す現象について、動画コメントに詳細を返信しました。気になる方はご覧ください

これからどーなっていくのか、楽しみです

目的はただ一つ。作業前のこのクオリティーを超える、鮮やかな緑をつくる!

そのための根元の通気環境の改善です。結果は3週間後。おたのしみに。

2022年7月16日撮影(サッチ取り前の状態)

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次の動画か、ライブ、ブログでお会いしましょう。

では、また!