梅雨というと、芝生の病害対策として病原をやっつける殺菌剤ばかりに目が向きがち。同時に意識すべきは「芝の健康」を保つことです。梅雨の芝生の管理では「束の間の雨上がりに、芝の根に息継ぎさせてあげること」を意識すると効果的です。
梅雨は芝の生理的サイクルが停滞しがち
- 芝は葉の光合成でつくったエネルギー源(糖)を根に送り、根はその糖を燃やしてエネルギーにして活動するため、酸素呼吸が必要です。
- 芝の葉の気孔からの水分の蒸散は、芝の体内に養分を吸い上げる管を負圧にし、これによって地中の根から地上隅々へと物資を輸送しています。
水に完全に完全に浸かってしまうと、これらの作用が著しく停滞します
一時的なことであればたいした問題にはなりませんが、水没状態で息継ぎ・リフレッシュできない期間があまりにも長く続くと、やがて新陳代謝が低下し、新しい細胞をつくるペースが落ちてくるため、外敵に侵入されやすくなります。
芝生に水溜りを見つけたら、水に沈んでいる芝は息を止めて呼吸できる時がくるのを待っているのです。
かわいそうですね。
月刊『家庭の芝生』5月号では、梅雨入り前の不陸修正の重要性をご説明しました。
梅雨の長雨でできる水溜りは病原菌の培養装置
芝の生理的サイクルが鈍る一方、病原の多くは水たまりが大好きです。
普段はさまざまな菌たちが住処を奪い合い、お互いに拮抗してバランスをとっていますが、長い時間、水が流れず滞り続けるとその環境を好む菌が有利に増殖し、菌の拮抗バランスが崩れます。
芝生の病害の原因となる病原のうち、多くを占める糸状菌はこうして、数を増やし戦力を増していきます。菌だって種の保存のために一生懸命生きています。チャンスあらば増殖するのはあたりまえです。
病害が発生するのは、「素因」「主因」「誘因」が揃った時のみ
実は、病害ってそんなに簡単には発生しません。
- 素因: 弱った芝
- 主因: 病原の勢力
- 誘因: 病原が芝に勝る環境(天候・水溜まり・温度・湿度など)
詳しくは、ブログにまとめてありますのでご覧ください。
自然界ではそうそう病原菌だけが勝てるなんてことは起こりません。自然の摂理はとても良くできています。
芝生の場合は、人間が芝刈りで葉を刈り取って芝を窮地に追い込むことで美しい緑の絨毯を形成しています。だから芝には余裕がありません。ふとしたことをきっかけに、芝と病原のチカラ関係が崩れ、芝が攻め込まれることが(よく)起こります。
その理由は月刊『家庭の芝生』6月号と、ブログで説明しています。
該当箇所への直リンクはこちら16:32から
16:32 殺菌剤を上手に使う・・・短い芝に病害はつきもの
殺菌剤は、その「主因」病原の勢力を低減させることダケに作用します。
「芝を治してくれる薬」だと勘違いしてはいけません。殺菌剤を使って「主因」(病原)を抑えることで、芝の生育環境を改善する猶予を与えてくれる薬です。
殺菌剤の使い方と、ローテーションの考え方については、こちらのブログにまとめてあります。同じ薬剤を使い続けないように工夫が必要です。ご参考にお役立てください。
芝生に生えるコケは、危険個所を教えてくれる
菌のバランスが崩れているか、病原が増殖しているか?なんてことは目視ではナカナカわからない。芝生に生えるコケは、その場所を一生懸命教えてくれます。
一生懸命「ここヤバイよーぉ!」って教えてくれてるんだと思うと、憎きコケにも感謝の情が湧いてきます。
コケを見つけたら「チャンス!」と前向きに捉え、コケを取り除きながら、その原因はなんだろなーってことを考えます。
根本の対策を打つことで「芝が喜ぶ環境づくり」ができます。
ただ薬を撒くだけでは、根本解決はできません。大切なのはコケが生えない環境づくり。
芝が健康に育つための水溜まり対策 不陸修正と表面排水
かつて病害に悩まされ続けた我が家の庭は、冠水から4分程度で水たまりが完全に消える芝生へと改良しました。その実証結果はこちらの動画をご覧ください。
つくり方は簡単。週末DIYでできてしまいます。
この再生リストに、芝生の表面排水のために我が家で取り組んだ全工程を公開しています( ↓ 画像をクリックするとご覧いただけます)
水はけのための対策あれこれ
工事レベルの難しい「暗渠排水」から、幼少期に培ったどろんこ遊びのスキルが生きる「エッジの溝掘り」まで、さまざまな表面排水の改善方法をブログ”にまとめて公開しています。
このブログでお伝えしたかったのは、水溜まりができない芝生づくりの大切さ
環境を整えれば、トラブルの発生は次第に少なくなり、やがて管理しやすい健康な芝生になっていきます。急速に整えようとすると費用も労力も大きくなりがちですが、日々、意識しつづけながら少しずつ改善に取り組めば、負荷なく何年かかけて理想の芝庭ができあがります。
芝生を観察しながら、ゆーっくり少しずつ改善していくことをオススメします。
芝生のつくりかたは「人それぞれ」。その人の目的と芝生に割り当てられる時間によって、自身に合った最適な方法を見つけることこそ大切。
僕のYouTubeや、SNS活動では、その「選択肢」を見つけるための基礎知識を公開しています
興味ある方は、ぜひ、チャンネル登録をお願いします。
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