コウライシバをはじめとする暖地型芝は、今、最も深く休眠している季節。地表部の殆どは、枯れている状態です。この現象はなぜ、起こり、芝生の手入れはいつから始めなきゃいけないのか、簡単にまとめておきます。
芝の休眠とは
暖地型芝草は、気候が生息に適さない条件になると、変化が激しい地表部に活動資源を送るのを止め(もしくは極端に少なくし)、土壌の緩衝能を活かして根幹部に命の源を集中させて、じっと環境が整うのを待つ性質があります。
休眠は、真冬だけではなくて、たとえば真夏に極度に水が枯渇して生命の危機状態に陥った時などにも起こります。生育に適さない環境をやり過ごす、芝の命の温存機能。それが休眠です。
コウライシバは10℃を下回ると生育できない
暖地型芝草の場合、外気温が10℃を下回る日が殆どを占める1月~2月中旬ごろまで、地表部の多くは枯れたままになります。芝の命は、休眠前に蓄えたエネルギー源と養分備蓄と共に、土壌の緩衝能に護られて地中の根で待機しています。
休眠中に実施すべき芝生の手入れ 末期には枯芝の除去と目土入れを
地表部の枯芝は、生きている芝の根(根幹部)を厳しい冬の気候から護ってくれる防寒具。地表の様々な激変を、緩やかに穏やかにして、芝の命に直接ダメージを与えるリスクを低減してくれる緩衝材です。
冬が終わり、芝が目覚める頃になると枯芝の役割は終わります
枯れた芝には、秋に感染した病原体が休眠して待機していたり、虫の卵がついていたり、雑草の種が付着していたりします。
芝が目覚める直前に、地表部の枯れ芝はできる限り取り除いてあげると、春の萌芽を健やかに迎える手助けになります。また、地表の枯芝を除去して芝丈を短く刈り揃えておくと、新しい芽が均一に低い位置から出てきて、その後の管理がとてもやりやすくなります。
1月末から2月初旬ごろにかけて、全国各地の有名な芝生地で、冬の終わりの風物詩、「芝焼き」が行われるのは、このためです。
家庭での芝焼きはとても危険です オススメしません
一般的な住宅街の庭で枯れ芝を燃やすことは様々な危険を伴いますので、オススメしません。そもそも条例などで焚き火や野焼きは禁止されているところもあります。ご注意ください。
また、キレイに燃やすためには枯芝が十分に乾燥していることが必要ですが、その状態では想定以上に燃え広がったり、火の粉が激しく舞い上がるなど火事の危険が高まります。
逆に、充分に乾燥していないと、こんな風に斑焼けになってしまって、病害虫・雑草駆除効果は得られ難い状態。何のために危険を冒すのか。無意味です。
本来、害虫防除まで含めた完全なる芝焼きをするためには、こんなにも焼かなきゃいけません。御覧いただければわかります。
行楽地の広大な敷地で、芝焼きをする理由の一つに「コストの低減」があると思います。広大な敷地を、人の手で刈り込んで膨大な刈りゴミを処分するには、大きなコスト負担を伴います。これを低減するため・・・という事情が大きいのではないでしょうか。
家庭では、芝刈り(低刈り)と枯芝の除去による方法がオススメ
芝刈り機の設定を徐々に低くして最低値まで何度も刈り取って、地表部の枯れた芝をなるべく取り除きます。
この作業は芝の新芽が出てからやると、芝にダメージ(蓄積エネルギー源・養分の消耗)を与えますから、芝が目覚める少し前、休眠が終わる頃を狙って実施するのがオススメです。
あると便利なのは、やはりコレ。
サッチ取りマシン比較検証動画
この季節は、寒の戻りも厳しいです。根がむき出しにならないように、根元に目土入れをしてあげましょう。
目土の基本は、芝のアタマを必ず出すこと。すべてを埋め込まないように注意してください。
目土の語源は、「目地土」。芝を埋めるものではありません。根元をサポートするイメージで、しっかりと落とし込みましょう。
落とし込みには、デッキブラシなど、柔軟性があって硬めのブラシが便利
実際の「枯芝の除去」作業の実例はこの動画でご覧いただけます
この季節に知っておいたほうが良いマメ知識は、この動画で
2月~4月までの芝生の管理に役立つ「芝生の雑学」を執筆中
チャンネル登録者さん向けの新作動画配信も予定しています
執筆は、農業マガジンに掲載予定。
動画は、東京40まいる「芝生の雑学」チャンネルで公開します。興味ある方は、チャンネル登録をよろしくお願いします。
日本芝草学会、2023年度春季大会に向けた準備も始まりました。
芝生の萌芽まであと1か月。今年も芝の性質をよく理解して、美しい芝生を育てましょう。
次の動画か、ブログでお会いしましょう。では、また!