芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

芝の萌芽はじまる! そして雑草注意報!

今朝、庭の芝の萌芽を確認しました!例年2月20日前後。今年は数日早いです。

千葉県北部 外房沿岸部の高麗芝

今年も順調なスタート。よく考えたら、庭の芝生がフルフラットで枯芝色の時期というのは、枯芝除去~萌芽本格化までの1週間ちょっとしかありません。

この景色は希少です。

芝よりも元気なスズメノカタビラ その対策は年越し前

枯芝を除去してしまうと、ここぞ!と猛威を振るうのが、芝生づくりの強敵雑草スズメノカタビラ。奴らは、昨年の秋に発芽して地に根を差し込み、地温があがり光が差し込むといよいよ出芽(地表に目に見えて現れてくること)。芝よりも早く猛威を振るい芝生管理の邪魔をします。初心者の方は「芝の新芽かな?」と勘違いしちゃう。

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対策は11月~12月

発芽したてのヨチヨチ歩きのスズメノカタビラを、年越し前にやっつけておくと春先がとても楽で穏やかです。僕は製薬会社envuの三好さんから教わりました。

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芝生生育の「スパイス」みたいなモンです。知らないよりは知っていたほうが良いこと。興味ある方は、ぜひ、チャンネル登録をお願いします。

この季節は、この動画でお話している40項目の雑学がきっとお役に立ちますよ!


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僕たちが開催している「芝生勉強会」のコンテンツ(会員限定動画)や、実地勉強会、見学会の案内など、一般公開されない一歩上をいく情報取得をご希望の方は、ぜひ、メンバーシップにご加入ください。月額460円。いつでも出入り自由です。

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2024年の芝生づくりが始まりました。今年も生命のドラマを思いっきり楽しみましょう!

次の動画かライブ配信、ブログ等でお会いしましょう。

では、また!

芝生の春の準備作業と電動道具評価

春を迎える芝生の枯芝除去に役立つ道具たち

適切な道具選びは、芝生管理の作業負荷を軽減して「時間」を産むとともに、道具の寿命を伸ばし、長い時間軸での費用対効果の向上に繋がります。

一見、贅沢に思える電動道具。買うべき?

実際の使用はこの動画の説明文にあるINDEXから該当作業シーンをご覧ください。 https://www.youtube.com/live/9TGQiUi4z_0?si=UB-XQeC3pi0VDYxZ
実は長い時間軸で考えると、投資相応の効果があります。長く続けるのであれば早期の入手がオススメ。作業負荷を軽減することは作業実施の継続性にも影響し、結果として美しい芝生を長く続けることにもつながります。

1.ロータリー式芝刈り機

なんと言っても、ボーボーに伸びた芝を刈るならこのタイプ。春の枯芝の除去にもってこいの方式です。

左がロータリー式、右がリール式。
ロータリー式は刈払い機の原理で芝を真横から回転刃で刈り飛ばす方式。サッチ除去後などの砂を巻き上げた状態でも安心して使用できます。
この方式は、刃の回転と共に風車を回して風を奥に送り出す方式。
使用のコツは、長い芝(5cm超級)を一気に刈らず、1回あたり2cmくらいずつ分割して刈込髙を下げていくのがオススメ。※一気に長い芝を刈ると詰まります。
サッチ除去などで砂を巻き上げた状態でリール式を使うと刃の損耗が激しくなりますが、ロータリー式なら大丈夫。
替え刃も千円台と、とてもリーズナブル。安心して使い込めます。この京セラLMR2300は超ロングセラーです。刈込み高4cm超をキープする人にはロータリー一択。
長く伸ばした冬の枯芝を除去するにはもっとも適した方式の芝刈り機です。
ただし、低く刈り込んだ時の仕上がりの美しさは、リール式にはかないません。

2.ナイロンワイヤー式刈払機

ボーボーに伸びた芝や、エッジの刈込みを速やかに行うならこの方式

壁にぶつけながら刈込みできるので、エッジの除去が非常にスムーズなのと、芝刈り機では手に負えないボーボーに伸びた芝(10cmクラス)の除去が効率よく行えます。
日常のエッジ処理にも、持っていると作業効率が大幅に改善するアイテム。
他のハイパワー電動工具を使う予定があるなら、バッテリーは初めから大容量を選ぶことをお勧めします。
BLI200Xは価格と性能のバランスでオススメです。

3.大風量バッテリーブロワ

ブロワーは風量と風速が命。選ぶなら強力なものを選びましょう。特にリール式芝刈り機を使用する前に、芝の葉に付着した砂などを吹き飛ばすと、刃の寿命を伸ばすことができます。

こちらもBLI20でも充分作動します。長時間安定して使いたいならBLI200Xバッテリーがオススメです。

4.電動デサッチマシン

これは芝生の美しさにこだわる人には「必須」と言ってもイイアイテムです。芝生のサッチ取り作業は高負荷作業の一つ。手作業だと同じ場所を何度も掻かないと出てきません。とても根気と体力、時間を要する作業です。
「時間と労力を金💰で買う」。もっとも投資効果が高いアイテムのひとつです。

こだわり派は、やはり専用機

家庭向けの「ド定番」は、キンボシLCA260RWです。

収納が極めてコンパクトにもかかわらず、土の中まで掻くことができる優れモノです。フロントキャッチャーなので作業効率がとても良いです。収納時はこんなに小さい。

安心してオススメできる逸品。

コードレスでも本格機がある

ハスクバーナS138i

ハイパワーコードレス機は、ハスクバーナプロショップで扱っています。
saito afro service inc.在庫あり
株式会社 斎藤商会|saito agri service inc.

本体・バッテリー・充電器セット

https://saitoagri.thebase.in/items/83269332

コード式では邪魔になるような広めの土地や電源がない敷地のサッチ取りに重宝します。
標準仕様で根切り刃とサッチング刃がついています。刃の交換は六角ボルト2本脱着するだけの超カンタン仕様。
マキタからも同様の機械がリリースされています(こちらは使ったことがナイのでわかりません。

形状からおそらくHusqvarnaと同等かと思います。
キンボシLCA260RWとの比較では、本体が大きく収納保管場所を選ぶ(物置や倉庫)のと、集草ボックスがリヤにつくタイプなので、着脱時やなにかの拍子に回収したサッチが溢れやすい点。
サッチ除去能力については遜色ありません。どちらを選ぶかは「好み」です。

5.リール式芝刈り機

低刈りの仕上げは、リール式を用いると美しいです。できることなら本番機の他に別途、枯芝除去用機(使い古しのリール式)などを用意しておくと良いと思います。

砂を巻き上げたあとにリール式を使うとどうしても刃の傷みが強くなり寿命を縮めます。
本番機は温存して、2番機を使うのが理想です。

6.目土散布機

手撒きだとどうしてもムラができます。ドロップ式スプレッダーは目土を均一に散布するのに役立ちます。

以上が、我が家で実際に使用している「枯芝除去」に役立つアイテム。ちょっと贅沢な投資ですけど、労力・時間・仕上がり・寿命・継続性の観点でとても有効です。

YouTube芝生の雑学 東京40まいるでは、芝生づくりに役立つ情報を公開しています

あなたの芝生づくりの情報源のひとつとしてお役立てください。
[https://youtube.com/@turfgrass?si=koGjJzz5AE08U5io:title=]
さらに、チャンネルメンバーシップでは、実地開催の勉強会や見学会など、芝生のプロとアマチュア愛好家の交流の場を多数提供しています。本気で勉強したい人はメンバーシップをご活用ください。月額490円です。

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次の動画かブログでお会いしましょう。
では、また!

【無料配信】本日20:30より特別講演ライブ『校庭・園庭の芝生管理』 石井力 先生

本日、20:30から、芝生管理に関する特別講演ライブ配信を行います。

 

講師: 横須賀工業高等学校 グリーンボランティア部顧問

    日本芝草学会 校庭芝生部会 委員 石井力 先生

神奈川県下No.1の校庭芝生化に成功した、横須賀工業高校の芝生管理の秘訣と、人のかかわり方など、自らのご経験・実践に基づき詳細に解説していただく予定です。

マチュア芝生愛好家、校庭・公園緑化に携わる方々にオススメのご講演です。

ぜひ、ご参加ください。

 

芝生が緑のまま冬を越してしまう場合の対処法

今日は大寒です。二十四節気の冬の最終節で、最も寒さが厳しくなる日を指します。

高麗芝をはじめとする暖地型芝は、この極寒の季節をやり過ごし、命のバトンを春につなげるために「休眠」をします。

緑のまま冬を越しそうな芝生

しかし、今シーズンの冬のように異常な温暖続きの年には、高麗芝の芝生がまだ緑を維持しているご家庭は多いのではないかと思います。(関東南部以西)

葉が緑を残したまま大寒を迎えた高麗芝

緑のまま冬を越したら、春を迎える手入れはどーしたらイイの?

安心してください。今ある緑は、芝が休眠に向かうために生成した植物ホルモンの影響で「色持ち」しているだけです。真夏のように活発な生理代謝をしているワケではありません。

本来なら、温度が急速に下がってくる時期に、老化を促進する植物ホルモン、エチレンやアブシジン酸などが「枯れの仕上げ」をしてくれるのですが、今シーズンはそのスイッチを入れる要件に満たない冬だった・・・というダケのことです。

いずれも、ホルモンの生成と代謝の結果、今の状態があるダケ。

同じ庭の中でも、緑の部分と茶色い部分があったりするのは、そのためです。

この季節の芝の健康の見分け方

芝の緑がまだ残っているからこそ、芝の状態を観察することもできます。

葉の先端から茶色が下りてきているなら、正常な休眠。

下部や茎葉の中部・下部から茶色が始まっているなら、なんらかの生理障害(害虫や病害の影響など)です。

いずれにしても、「今」何かが始まることはナイので、春に向けて生育プランを考えるのが得策だと思います。

例年どおりで気にする必要はない

枯芝の除去は、萌芽が始まる前であれば、いつやっても変わりありません。

芝をよく観察する愛好家でしたら、萌芽が始まる1週間前くらいまでに枯れ芝除去を終えておけば、芝が目覚め、自分のチカラで起き上がってくる生命のドラマを毎日楽しむことができます。この画像では、芝の目覚めに合わせてサビ病も目覚めていることが観察できます。

春の萌芽前に地表部の枯れ芝を除去すると、新芽の動きが観察できる

僕は、芝生を生育する一年の中で、「萌芽期」がもっとも好きです。

一緒に、生きた芝の生命の息吹を感じましょう。

2月からゴールデンウィークまで役立つ芝生の雑学

2月~GW前までの芝の生理代謝について、この動画にまとめてあります。本格的な作業が始まる前に、ご覧いただくことをオススメします。

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芝の生理代謝がわかれば、芝生づくりは一層楽しくなりますよ!

芝の生育に役立つ、植物生理と実作業の関係

年末の2時間ライブで語りました。興味ある方は、こちらの動画をご覧いただくと、芝生についての知見が格段に広がると思います。

youtu.be

 youtu.b

芝生の雑学 TOKYO40mile では、さまざまなプロ・専門家の世界から、芝生の生育に役立つ雑学を発掘して、みなさんに動画で提供しています。

健康な芝生づくりの参考情報の一つとして、お役立ていただけたら幸いです。

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書籍にもインターネットにも載っていない、裏情報まで知りたい!という人には、チャンネルメンバーシップ「芝生の学び裏情報」がオススメです。

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月額490円です。

 

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では、また!

 

2024年に役立つ家庭園芸芝生の雑学 YouTubeライブ配信

今晩(12月30日)21:30からのライブ配信では「2024年に役立つ家庭園芸芝生の雑学」と題して、芝生手入れの様々な作業の実施時期や方法を考えるためのヒントになる「雑学」のお話をします。

そもそも「芝生の手入れ」って何なんでしょうか?基礎から知りたい人はお集りください。

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12月30日 21:30からライブ配信

 

JリーグAC長野パルセイロを支える長野Uスタピッチ管理の極意〜 ヘッドグラウンドキーパー青木茂さんに聞く

AC長野パルセイロサポーターの皆さんへ

芝生の雑学 東京40まいると申します。サッカーJリーグは「生きた芝」「常緑」が条件のピッチで戦う競技です。

各スタジアムに芝の命を操るキーパーがいて、植物である芝の命のチカラを引き出すコントロールをしています。ホーム・アウェイのピッチ。各スタジアムの事情で限られた環境・日程、予算の過酷条件の中で、グラウンズマンたちは通常では考えられないような最大限の芝生回復に努め、試合を迎えます。これも含めてJリーグ

ちょうどWRC世界ラリー選手権のサービスメカニックが、タイヤがモゲてボロボロになって到着したラリーカーを、たった40分の制限時間内に修理して送り出すのと似ています。

サッカーチーム選手がドライバー、コ・ドライバー(実際に走る人)なら、グラウンドキーパーはサービスメカニック。いつだって「完璧」とはいかないけど、最大限の回復をさせてその時のベストを尽くして送り出す。これの連続です。

今回は長野Uスタジアムのピッチ管理のヘッドグラウンドキーパー青木茂さんにUスタピッチ管理の極意を教えていただきました。

知らなくても観戦はドラマチックだけど、ピッチ管理を知ったら感動はもっと深く味わえる

それが「雑学のチカラ」です😊
日本に一つしかない誇り高きUスタピッチ管理の「心」をみんなに知ってもらいたい!まずはこの動画をご覧になってからお読みください。
[https://youtu.be/eqLsbj7l4dM?si=vGDHEVr9pTdheJat:title=]

スタジアムのピッチ管理の前提条件はスタジアム毎にまるで違う

これまで様々なスタジアムをめぐり、スタジアム運営には「興行(使い方)」の事情、「環境(気候と施設構造)」、「設備」「予算」など、それぞれに(まったく)異なる前提条件(植物生理・社会・経済)があることを知りました。

スタジアムのグラウンドキーパーは、その地の限られた前提条件の中で、芝の命を操りプレイングqualityとターフqualityの最大値(瞬発・持続の両面から)を引き出す技術者。まさに魔法使いのような存在です。
そして、ターフ管理の「手段」にも実に様々な選択肢があることをこれまでに学んできました。

AC長野パルセイロ 長野Uスタジアム(南長野総合運動公園球技場)のピッチ管理の特徴

南長野運動公園内にある球技専用スタジアム、長野Uスタジアム(通称Uスタ)では、「芝を健康に」「強く」育てることを中心に据えた生育管理を実践。
選んだ芝種は、生育条件が整った(揃った)時に得られる美しさの最高値が最も高いブルーグラス
これがヘッドグラウンドキーパー青木茂さんのピッチ管理の基本方針です。

Uスタのあの眩しい緑は健康なブルーグラスの色そのものなんです。管理の難度は高く、ブルーグラスだけでプレークオリティーを維持しているスタジアムは極めて稀です。高度な管理技術を持つキーパーしか扱えない最高に美しい緑の芝種。Jリーグ東北地方のグラウンドキーパーさんたちも、青木さんの管理技術を参考に学んだりしています。

芝生の雑学東京40まいるチャンネルメンバーシップのみなさんには、青木茂さん自身が語るピッチ管理解説の未編集版を共有。一般公開版は、冒頭の動画をご覧ください😊

水の動き、太陽の光、空気の動きが健康な芝をつくる

ここは球技専用のスタジアム。興行(利用)の観点で、選手のプレークオリティーやターフクオリティーといった芝生の質的側面、観客席からみた視覚的美しさも理想を追究できる可能性が比較的高い運営のようです。
青木さんは、Uスタの設計段階から主導的に携わり、芝の生育環境を考慮した施設・設備が備わっている点が、このスタジアムの特徴です。

太陽の光(日照時間の確保)

長野Uスタジアムの「U」の由来は、南側スタンドは2階席が無く、屋根が南側だけ低いため、スタジアムの屋根全体が「Uの字」状に見えるからだそうです。

南側をスタジアムとしては極限まで低くして日照が芝に当たる時間を長く取るようにしている。
残念ながらオーロラビジョンだけは、どうしても南に設置になってしまった・・・と残念そうに話す青木さん。

ちなみに、多くのスタジアムは360度高い位置に屋根があり、日中の日照時間は30%台くらい・・・なんてスタジアムも多々あります。(画像はよくある360度屋根の典型例・参考イメージ)

僕は我が家の芝生は「日陰だから逆境」なんて言い訳してましたが、スタジアムピッチ見学をするようになって、この考えを改めました。
芝の命を操る技術と経験、優れた勘を磨けば、日照条件が悪くてもプレイに耐えるスポーツターフはつくれる。
グラウンドキーパーさんたちは、まさに芝生のお医者さん。主治医なんです。
逆境を克服する技術を知るたび、僕は胸ときめき、「もっと多くのサポーターのみなさんにグラウンドキーパーさんの努力と成果を知ってもらいたい!」と思います。

長野UスタジアムのUの字は、日照を取り込み、太陽の光を芝生に当てる時間を長く取るための南側が低い「U」です。

陽が当たらない南側スタンド前ゴール裏エリアの管理

「はじめは芝を諦めて剥がしたこともある」と青木さんが語る南側スタンド前エリア。ここは流石に一日中、陽が当たらない。

補光機の活用と糖の投入の緻密な管理で芝生化に成功。僕が見学したときには全面、美しいブルーグラスになってました。

サポーターが観ていない時、それぞれのグラウンドキーパーさんはこんな風に様々な手を尽くして芝の命をコントロールしています。その時、その時の条件下で最高の値に引き出す努力を捧げ、ピッチを維持管理してるんです😍

芝生での糖のコントロールって、僕は先日の芝草学会秋田県芝生地見学会のときに初めて知りました。

青木さんのお話によれば、日照が足りず、地下茎を張るためのエネルギー余力が足りない時、糖資材をコントロールして支援してあげるんだそうです。
「そんな手段があったのか!」と、胸ときめきました。芝生の管理って奥が深くて面白い😊
こういうお話を聞けるのが、僕の活動の原動力です。

水で床土の中の空気を入れ替える 土壌の呼吸コントロール

★ 散水は「一気に大流量」を全面に。そうすることで散水後の水の垂直移動が綺麗に行われて古いガスが抜けて新鮮な空気が根に届く。
★水はすべての栄養吸収の媒介。床土の中から動いて移動して芝が体内に取り込み、養分・エネルギーを媒介移動させる重要な役割。
★管理を誤れば病害の原因にもなる
★ダラダラと多頻度で散水するのではなく、メリハリをつけて大量散水することで根が水を追いかけて強く深く張る。
これが、青木さんがおっしゃっていたことです。
もちろん地下30cmまで川砂が入っている床土での管理であることが前提です。
(補足: 床土が土ベースのお庭などでは、もっと少量長時間で染み込ませる必要アリかと)

スタジアムには54基のスプリンクラーが埋まっていて、
そのうち28基でピッチ内を一斉に散水できるそうです。(画像の状態)
この一斉散水の画像はとても珍しいシーンで、一般的なスプリンクラーは、何ブロックかに分けてリレー式でパイプ経路を切替えて順番に水圧をかけて散水していく方式が多いです。
「一斉・同時散水」に拘っているのが、青木さんが手掛けるUスタ式。こういうところもAC長野パルセイロサポーターの皆さん、知っておくと「通」ですよ😊

寒地型なので地温が低い時に散水するためにも、一気大量、全面散水のこのシステムが重要な役割を担っているとのこと。
ドーンと水をあげて、さーっと下に落ちていくことで
土壌空気の入れ替えになるし、根が空気を吸って水を追いかけて強くなる。ここではそういう水の操り方を実践しているそうです。

(この日は、佐野綾さん率いる関係業者さん達による年に一度の散水システムの点検日。僕は綾さんにお願いしてこのタイミングについてきて青木さんへの取材実現😊というワケ。綾さん、ありがと!)

地ギワに新鮮な空気の流れをつくる仕掛け

スタジアムの南北には芝の面をカバーする低い位置のルーパーというシャッターのようなものが一列に配備しています。

この銀色のルーパーは、90度全開に開く構造になっていて、スタジアムの外から入ってくる空気の流れを妨げず、そのままピッチの芝生面を流れていきます。
空気の動きを止めないために、スタジアムの外の塀もメッシュになっているという徹底ぶり。

芝の根は酸素呼吸で糖をエネルギーに換えることで様々な生理代謝をしていますし、根から養水分を吸い上げるのにも、葉の気孔からの蒸散が体内ポンプ(負圧発生)の役割を担っています。
だから、芝の地面の空気を適切に動かすことは、家庭園芸芝生でも重要です。いわば芝の健康直結の要素の一つ。

一般的なスタジアムでは送風機などで空気を強制的に動かすところもありますけど、ここには送風機はありません。
地域の気候の自然のチカラを活かした健康で強い芝生づくり!それが、青木さんが手掛ける長野Uスタジアムのピッチ管理なのです。
以上が、ピッチの芝を健康に育てるための施設と運営の工夫。青木さん流のピッチづくりです。
設計段階から主導的に携わり、芝の植物生理を尊重した施設づくり。この理解が運営全体で得られていることも、青木さんの地域コミュニティづくりの賜物なんだと思います。
「芝生は人の関わり」 それを強力に実践している人です。

芝刈り機の刃の切れ味にこだわる 常に本研磨で刀のような刃を維持する

芝刈りは芝にダメージを与える工程でもあります。刈り取る切り口は、鋭利な刃物であるほど、芝の負荷は少なく回復も早い。
刃物管理にも芝への優しさが注がれています。
ここのスタジアムのリール式芝刈り機の刃は、バーンハード(BERNHARD) という専用の研磨機で精巧に研ぎ澄まされます。

この、刀のような斜めの研磨が2番どり。刀の刃と同じですね。ラッピング研磨では研げない部分です。このように手作業で熟練の人が研いでいきます。

そして一番どり。ラッピングで削るのと同じ部分ですが、この機械ではリールの円筒形の真円補正も自動で行います。

さらにはこのリール刃が接触するベッドナイフも精度を出して研磨します。

芝生の雑学 東京40まいる YouTubeチャンネルメンバーシップのみなさんには、この刃研ぎシーンの取材動画を未編集で丸ごと共有しています。
滅多に見れない貴重なシーンですので、ぜひ、ご覧ください。

高精度な切れ味の持続がもたらすもの

  • まず、円筒のリール刃が精度高く接触するので切れ味は抜群。芝へのストレス負荷を最小限に鋭く刈り込みます。
  • 歪みがないので機械本体の負荷も少なくロングライフ化にも貢献。
  • さらに、ラッピングコンパウンド研磨に比べて、切れ味が長持ちするので、研磨作業にかかる時間を節減し、事業の推進に人的配分を割り当てられる。
  • BERNHARDは非常に高価な機械(今だと価格高騰につき1000万円前後か?と。)だけど、この投資から生まれる副次的効果も含めて考慮すると、ここでの使用では充分に採算があうそうです。

スタジアムでこの研磨機を導入しているのは日本でココだそうです。

気候変化への対応の研究・実証も積極推進

寒地型芝のブルーグラスは、夏の暑さに弱い。長野でも温暖化は進み、最近では夜温が落ちないことも多くなってきたそうです。
その影響か、真夏が過ぎた後、エネルギー切れなどに起因する地下茎の発達不足などから、芝の疲れ・秋落ち症状の傾向が年々、次第に強くなってきているのを感じるそうです。僕が見学したのは11月。もうすっかり回復してましたけどね😍

青木さんがタホマ31に注目しているのは、近い将来の長野の気温上昇への対応
今、世界中で注目され、日本でも芝生専門家やマニアの間では関心事となっている新品種の改良スポーツターフ、タホマ31。

青木茂さんは、全国各地で導入されるタホマ31には、必ずといっていいほど主導者またはアドバイザーとして関わっています。

年々気温上昇が続く長野で、いつかはブルーグラス(寒地型芝)の常緑管理を諦めるときがくるかもしれない

そんな思いで、今度は「冬の寒さに強い暖地型芝」による単一品種常緑実現の可能性として、新品種タホマ31の実力に深く関心を持ち、自らが実践者として実地実証を進めているそうです。
芝は生き物。カタログデータではわからないこともある。日本の土地で実際に育てて初めて活かせる知見が得られる。
すべては、長野Uスタジアムの常緑で美しいピッチのため。

ヘッドグラウンドキーパー青木さんは、長野Uスタジアムの未来に向け、今も思考をめぐらせて謙虚に学びベストを尽くしています。

長野Uスタジアムは、奇跡的に好条件が整ったハイクオリティターフのピッチ

芝の生育を重視した最適なスタジアム設備。
設計段階から主導的に携わった、一流グラウンドキーパー青木茂さんをヘッドに、この地域での芝生地管理を知り尽くした長野市開発公社所属のグラウンド管理技術者たち。熟練の機械管理技術者。

そして世界的に珍しいという極めて美しいブルーグラスでの常緑管理。

ここをホームとする長野パルセイロの選手、サポーター・ファンの皆さんは幸せですね😊

ぜひ、みんなが見ていない時に情熱注いで活躍しているグラウンドキーパーのみなさんにも熱いエールを送ってください。

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