芝生の雑学 東京40まいる

芝生の手入れに役立つ雑学専門ブログ

芝生の目砂選びで考える2つの要素

この動画に「珪砂は目砂として使えますか?」というご質問コメントがありました。芝生づくりの目砂選びで考えたほうが良いポイントをまとめます。


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おそらく、「珪砂」とおっしゃっているのは、こういうヤツのことじゃないかなー?と思います。

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コメリで25Kg900円弱で手に入る珪砂

目砂選びのポイントは「芝をどう育てたいか(方針)」と「砂の品質」で決まります

簡単なようで正確にお伝えするのがとても難しいご質問です。大きく2つの要素で答えが変わります。まず第一の要素は「芝をどんな風に育てたいか?」。第二の要素は「その砂はどういう品質か?」です。
我が家で使用実績があるのは、主に3種類。

芝生用バロネス焼き砂(10Kgあたり2000円弱)

メインの高麗芝で使用中

珪砂5号(25Kgあたり900円前後)

セントオーガスチングラスエリアで実験中

砂・細目砂(15Kgあたり199円、299円)ホームセンターで売っている安い砂

姫高麗芝エリアで実験中


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我が家では、「バロネス焼き砂」「珪砂5号」「セメント用の安い砂」を使用して、その違いを2年間観察しました。その結果得られた教訓を共有させていただきます。

芝はどんな砂でも最終的には育つ

まず、粗削りに申し上げると、どんな砂を使っても最終的には芝は育ちます。気を付けるポイントは、「海由来で塩分を含むもの」と「貝殻などアルカリ性のものを含むもの」だけは避けたほうが良いということです。

「珪砂」にもいろいろある

珪砂という名前の砂にもさまざまなものがあります。

山で採取したもの」「川などから採取したもの」「海床に堆積したもの」などです。そして自然に磨かれて粒が丸まったものと、岩を砕いて人工的に砂にしたものがあります。製品として「砂」にするにあたり、「無調整」のものと、「洗浄」したものと、「加熱」して雑菌などを排除したもの、加えて「pH調整」したものがあります。

もちろん、後者に近づくほど「安全で高価」になります。

「高級な芝生用砂」の代表格として「バロネス焼き砂」の製造工程をご覧いただけるとわかります。(ページ下方参照)

www.baroness-direct.com2

どんな風に芝生を管理したいのか?(砂選びは方針による)

まず、第一の要素「芝をどんな風に育てたいか?」という方針により砂の選択を判断することになります。

とにかくお金を節約して芝を育てたいなら・・・

塩分が含まれず貝殻を含まない砂なら何を使ってもたいてい大丈夫です。
公園や数千円でプレーできるリーズナブルなゴルフ場や、フェアウェイなどでは、そういう砂を目砂として使っていることもあるように見受けられます。

ただし、コストパフォーマンスと引き換えに、病原菌や雑草の種、昆虫の卵などが混入しているリスクは受容することになります。
リスクを低減するためには、購入した後、ご自身の手で、大きなバケツ等(ゴミ捨て用のバケツなど巨大なもの)でたくさんの水を使ってよく水洗いすると良いと思います。(最低でも5回以上は水を入れ替えて洗ったほうが良いです)

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ゴルフ場のフェアウェイ砂の一例 ※この砂は洗浄砂だそうです

酸度計などでpHを測定し、概ね中性(7)~弱酸性(6方向)であれば、芝に適合します。(たいていは適合します。)
貝殻が混じっている砂など、アルカリ性の物質を含む砂を使うと、芝が喜ばないばかりか、地面にカビなどが生えやすく芝が死滅する原因になります。産地と中身は確認したほうが良いです。

そして「土」は以外とナイーブです。たとえば植物が育つための必須元素のうち「カリウム」「カルシウム」「マグネシウム」には拮抗作用があって、どれかが多いと他の元素の吸収が抑制される・・・など、土・砂の性質によって植物はさまざまな影響を受けます。この「バランス」は、安い砂にはあまり期待できません。品質も常に一定とは限りません。

でも、芝は生命力が強い植物(雑草に近い)なので、芝丈さえ適切な長さに管理して日照がしっかりとあれば、たいてい「育ちは」します。

お金をかけても、安全に美しく育てたいなら・・・

芝生用に調整された「焼き砂」や「洗砂」がオススメです。しかし出費は嵩みます。

「洗浄」「加熱」「調整」という工程が入る上、この手の砂は通販などで売られることが多く「輸送料」が上乗せされます。だからどうしても高価になってしまいます。
芝生の手入れで最も難儀なのは「謎の病気」です。土や砂が変わると、その都度、土の性質によって違う病害が発生したりするので、性質がパターン化(その庭固有・季節固有の病害の出方)されず、対策を考えるのが難しくなったりします。(予防が打ちにくく、症状が出てから対処するなど、芝にダメージが多くなる方向)


もし、お庭の病害パターンをちゃんと把握して、無駄なく適切に予防管理を行いたいのであれば、「土」「砂」の持ち込みによる「変動要素」を排除しておいたほうが無難(庭の性質がわかりやすく、効果的な対策が打ちやすい)です。

「砂の値段」だけで考えず、その後の手間や追加コスト、リスクを考慮して、ご自身の目的に合うのであれば、安全な砂を選ぶのが最良の選択です。

お金を地面にぶちまけている感、ハンパナイですけど(^^;)

それさえ気にしなければ至高です。ここが難しいところです。

我が家での実験結果(砂の性質別)※画像はいすれも今朝撮影

無調整の珪砂5号を使ったセントオーガスチングラスエリアは、今年5月と秋(現在)、謎の症状が出ています。芝が死滅するほどではないので、薬剤を試しながら経過観察中です。

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コメリで買った珪砂5号を使っているセントオーガスチングラスエリア

199円・299円のセメント用砂で床土をつくった姫高麗芝エリアは、地表にカビが生えやすく芝の密度がまばらです。日照の問題もありますので一概に「砂のせい」とは断定できませんが、コケ・カビ・雑草の影響が強く出ている事実があります。

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安いセメント用の砂を使っている姫高麗芝エリア

バロネス目土・床土・焼き砂だけで育っているメインの高麗芝は、病害の発生パターンが明確にわかり、今年はついに病害発生ゼロ(完全予防)を成し遂げました。

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メインの高麗芝エリアは雑菌がないバロネス目土床土と焼き砂のみを4年使用

第一の要素「芝をどんな風に育てたいか?」、第二の要素は「その珪砂とはどういう珪砂か?」でご質問に対する適切な答えが決まる・・・というお話。

できるだけ詳しく回答させていただきました。ご参考まで。

 

「目土」がいいの?「目砂」がいいの?

今回は「砂について」の質問だったので「砂の選択肢」のお話をしましたが、そもそも「目砂」を使うか「目土」を使うか?という入り口の大きな選択肢があります。

包容力が高く、手間いらずの安心の芝に育てたいなら目土。家庭の鑑賞用の芝に向いています。
土壌の水はけ改良を優先したり、緻密な肥料・資材管理ができるなら目砂。「遊ぶ」「使う」が中心の芝生の場合はたくさん踏んでも土が締まりにくい、砂中心の土壌のほうが踏圧トラブルは少ないです。

キャパが大きく様々な面で包容力がある目土、水はけが良く踏圧で締まらず保肥力が弱い目砂。どちらが適しているかは、そのお庭の事情とオーナーの使い方、管理の頻度等によります。春になって目土入れのシーズンがきましたら、いずれこのお話も。

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